ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

規模が小さい?

 北朝鮮は核実験は成功したと発表したらしい。放射能漏れもないというコメントも発表には含まれていた。核実験としては規模が小さいと韓国筋はコメントしたという。本当に核実験なのかどうかは確認のしようがあるのだろうか。そして安全に実施されたといっても本当に安全なのかどうか確認のしようもあるまい。偏西風がどうなのかというデーターはどこかで見ることができないものだろうか。NHKは徹底してこの関連を告げていくらしい。
中には実験は失敗だった模様だと告げている人もいる。爆発の規模が充分に大きくないと。臨界に達する前の未熟爆発ではないかと。直ちに次の実験に取りかかろうとしている人の動きが見えるのだそうだ。
おかげで東京のテレビでオーストラリアの議会を久しぶりに見ることができました。ジョン・ハワード北朝鮮弾劾演説。

船の事故

 今回の台風並み暴風低気圧の影響で何件かの船舶事故が起きている。下田から新島へ向かった釣り船の事故はよく分からないけれど、座礁してしまったサンマ漁船の「第7千代丸」と大型貨物船の「Giant Step」は座礁の挙げ句に船体が折れてしまった。第7千代丸の方はなんでわざわざ悪天候を突いて母港の気仙沼、あるいは最初にいくといっていた八戸ではなく、女川に固執したのだろうか。漁労長が権限を握っているという積み卸し港選択にこだわったということなのだろうか。
 Giant Stepの方はオーストラリアから鉄鉱石を満載して、多分住友金属、鹿島製鉄所に荷を下ろすために沖待ちの状態に入り、アンカー、レッコー(碇を降ろす)状態にあったらしい。マスコミの船の報道ではいつも歯ぎしりをさせられるのだけれども、この船は「9万8587トン」と表現されている。それで積み荷の鉄鉱石は19.1万屯を積んできたという。普通の人はいったいどれほどの船なのか、さっぱり判断が付かない。船を表している「9万8587トン」は総トン数といわれる数字で、英語ではgross tonという。定められた計算の方法があり、この数字で船を岸壁に着ける時に払わなくてはならない費用や、船を登録する時の基準になる。そして鉄鉱石19.1万屯は荷物の重さである。鉄鉱石は比重が重いから大きさよりもこちらが優先するが綿のようなものを運ぶ時は、比重が軽く、重さよりも大きさが優先する。これを載貨重量(積むことができる荷物の大きさ、あるいは重さ)といい、英語ではdeadweight tonという。
 Giant Stepは多分全長で300mを超えるだろうと思う。こんな大きな船がなんで簡単に(簡単じゃなかったんだろうけれど)座礁して折れてしまったりするんだろうかと不思議だった。かつて野島崎沖で何杯もの大型貨物船が折れて沈没し、日本の造船業界が震撼におびえた時期がある。それは昭和40年代の中頃で、まさに造船業界が未曾有の好景気に繁忙を極めていた時期である。「ぼりばあ丸」「かりふぉるにあ丸」が異常な大波を受けて船首部外板が破損し、結果として沈没した。かりふぉるにあ丸は総トン数3.4万屯、全長218mである。強風によって大きな波が立ち、それがたまたま同調して異常なまでの大波を起こしたと推察された。
海難審判所の記録から、その時の記述を引用してみる

 左舷船首5度ないし10度方向にあたり300ないし400mのところに白く砕けながら 続いて来る二つの大波を認め、手前の大波が船首前方100mばかりに接近したとき突然これらが今までの2倍ぐらいの異常な大波に盛り上がったので、 恐怖を感じて思わず「大きいな」と叫び、その直後本船の船首が、手前の大波に乗り、この波が船首楼甲板に打ち上がり、揚錨機を洗いながら1番倉口上に散っ た。
 まもなくこの波の峰が、船側を後方に移動するにつれ、船首が左舷に傾斜しながら次の波との谷間に向かって下がって行き、一つ目の波の峰が船体後部の船橋 楼付近に来て船首がやや上がりかけた同時30分(船内時刻)本船は、二つ目の大波(この波頭を本船船橋から見たときの模様は、船首楼甲板のブルワークより も3、4メートル高かった。)を左舷船首部に受け、この瞬間操舵手は、今までに経験したことのないものすごい衝撃(ぐ、ぐっと船の速力が止められるような 衝撃)と形容しがたいドスンという異様な音(これは船首側面から波があったときアンカーが船側をたたく音に似ていた)とを聞き、その直後この大波が青波の まま船首楼上に打ち込み、1番倉口上をも覆い、甲板上を船橋楼前面まで流れて来るのを認め、急いで船橋の左舷ウイングに出て見たところ、船首の方は水浸し であったため何も見えなかったが、蒸気が噴き出すような「シュー」という音が左舷船首部付近から聞こえ、船体が左舷に傾きはじめるのを感じた。

 とんでもない波の出現がこうして淡々と表現されるとより一層その恐ろしさを慮ることができそうである。しかし、この頃大いに議論となったのは、あまりの効率化設計に邁進するあまり、強度的に問題があったのではないかという点であった。というのはとことん安全係数をギリギリまで下げることによってコストの低減化に励むことがよいことだとされる時代だったからでもある。
 私がこのGiant Stepの挫傷、折損事故を聞いた時に想い出したのは、このことだった。しかし、どうやら原因は他にあったようである。本船は沖待ちのためにアンカーをうち、当然の如くエンジンを止めていたであろう。低気圧の接近に伴い、影響を避けるためによりエンジンをかけ、沖に出て、風上に向かって低気圧が行きすぎるのを待つというのが私が考えられる手段である。普通ならばエンジンをかけ、アンカーを巻く。
 ところが本船は後の新聞記事によると、アンカーウィンチが原因なのかは不明だけれども、アンカーを巻き上げることができなかったという。そこでアンカーを切ったというのだ。船首部と船尾部(居住区や機関部分が存在)とに乗組員が分かれていたことの理由はここにあるのだろう。挙げ句の果てにエンジンがブローバイを原因とする火災が発生したというわけのようで、こうなるともうただの鉄の箱に成り下がり果て、後は波のおもむくままに流され、座礁し、重力が偏って船体にかかり折れてしまう。
 流れ出した燃料油がどれほど残っていたのか分からないが満載状態であるはずはないからその点では多少まだ良い方かもしれない。荷の鉄鉱石は海中に沈むだろうが、鋼構造物を沈めているのと同じで、多分(全く確証なくいっているが)生態系に対する大きな影響は生み出さないのではないだろうか。
 第7千代丸の方も新聞記事によるとエンジン・トラブルがあり、その瞬間はエンジンが止まっていたといわれている。本船は先月もエンジントラブルがあったが幸いにして始動したのだそうだ。追い風だったという話があるから大波に船尾から洗われ、エンジンルームに水が入って止まったのではないかという推測もされている。2時間早く女川港に入港した他の漁船もいるという。
 もう一つこれからの捜査が待たれるのは、Giant Stepの船長がいっている「低気圧に関する情報がどこからも来なかった」という発言である。代理店の住金物流は無線で連絡を入れた、と主張している。情報が来なくたってあの天気図を見たらやばそうだという判断ができるのが外洋船の船長としての技術じゃないかなぁ。