ほぼ足りてまだ欲 その先

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身につまされる

 「ばかやろう解散」は歴史上でも有名だけれども、「ばかやろう解雇」は初耳。しかし、これは笑えない。というのは私がサラリーマンをやっていた頃、私の口癖は「ばかやろう」だったのである。これは親しい相手には親しいニュアンスがあっての「ばかやろうぅん」であり、本当に怒っている時、例えば電話で訳の分からんことをいつまでもねちねちやられた時や、典型的な例でいえば、前を通った後輩の私をとどめて、「俺は今日から昇格したのをお前は知らないのか、一言あっても良いだろう」といった身の程知らずのおやじに丁寧に「おめでとうございます」と頭を下げ、その部屋から出るや否やにいった「ばかやろう」とは当然にニュアンスが違うのである。しかし、当時殺伐たる雰囲気でやりたくもない仕事をするしかなかった不景気状況の中で、一緒になった同期の九州出身の男がある日私にくれた「その“ばかやろう”はやめた方が良いよ」という助言にはすっかりしょげてしまったものだった。関東のがらっぱちには通じるけれども、当然の如く、そんなニュアンスを知らない人にはひとつの言葉としてしか通じない。全く今から考えると、実に慚愧に堪えない。
 この事件は全くそんなニュアンスとは関係がないけれど、たったこれだけの新聞記事から推察するに、人材派遣の会社で日系ブラジル人が通訳として働いてきたというのだから要の仕事をしていたという立場だったことだろう。豊橋は群馬の太田と並んで日系人労働者のメッカである。しかし、多分、これは全くの推察だけれども派遣会社の経営者からすると文化的なぶつかり合いが生じる最前線でもあるだろう。「悪いようにはしない」という言葉やニュアンスは日本の文化のもとでは通用するけれど、多文化がぶつかる所ではなかなか通じない。そんなことでも底流にあるんじゃないか、ととにかく思いついただけなり。

「ばかやろうで解雇は酷」と無効判決、でも懲戒対象
 上司への暴言を理由に解雇されたのは不当と、愛知県豊橋市日系ブラジル人男性(35)が、静岡県浜松市の人材派遣会社「ラポール・サービス」に地位保全などを求めた仮処分申請で、名古屋地裁の上村考由裁判官は19日、「『ばかやろう』と言っただけで解雇するのは酷」と、解雇無効の決定を出した。決定によると、男性は通訳として勤務している同社豊橋営業所で今年6月、有給休暇の届け方を巡って上司とトラブルになり、「ばかやろう、おれは子供ではない」と、電話で暴言を吐いた。同社は7月、「職場の秩序を乱し、その後の勤務態度が著しく不良」として、男性を解雇した。決定で上村裁判官は「部下が、上司に『ばかやろう』と言ってはならないことは明らかで、戒告などの懲戒対象にはなるが、解雇まではできない」とした。
(2006年10月19日21時14分 読売新聞)

朝日新聞はブラジル人の実名表記である。

上司に「ばかやろう」で解雇は無効 名古屋地裁 朝日新聞2006年10月19日20時26分
 静岡県浜松市の人材派遣会社「ラポール・サービス」を解雇された日系ブラジル人のダ・ローシャ・アントニオ・マルコスさん(35)=愛知県豊橋市=が、地位確認などを求めた仮処分申請に対し、名古屋地裁は19日、同社に解雇の無効と賃金の支払いを命じる決定をした。上村考由裁判官は「上司に『ばかやろう』と言ったことで解雇するのは酷だ」と述べた。 決定によると、マルコスさんは6月、休暇の申請方法をめぐり、同社役員に「ばかやろう」と発言。2日後に「職場の秩序を乱した」などとして解雇を通知された。マルコスさんの発言について上村裁判官は、「部下として言ってはならないことは明らかで、懲戒の対象にはなり得るが、同社は別の部門に配置するなどの努力もしておらず、解雇権の乱用だ」と結論づけた。同社は「責任者がいないのでコメントできない」としている。

会社は当然このままで終わりにはしないんだろうなぁ。それにしても職場の雰囲気は社名のようにはいっていなかったようだ。