ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

北海道サンル川

 NHKの「さわやか自然百景」という15分番組を初めて知った。ヤマメが海に下るとサクラマスになり、鮭と同じように産卵のために遡上してくるんだという話を知ってはいた。つまりヤマメはサクラマスの陸封型であるということ。渓流釣りに一度は染まってしまった人ならどこかでそんな話は読んだことがあったりする。しかし、遡上してきたサクラマスが産卵する時に、陸封されていたヤマメがその10倍ほどの大きさのあるサクラマスの雄と一緒になって生意気にも争って(というよりも隙を狙ってというべきか)精子をかけるだなんて、その場面にはびっくりする。しかも、陸封された個体は生存競争に勝った雄だというのである。勝ったと思った奴は実は狭い、細い渓流に暮らすわけで、負けた奴は大海原に出て行くのである。どっちが結果的に勝ちなんだろうか?勝ったと思った奴は実は狭量な人生、いや魚生を送るのである。この番組の凄いのはそれだけにとどまらない。夜、川の縁の底に下りて静かにしているヤマメをあたかもアンコウのような、コチのような不格好だけれども、口だけは開けたら思いっきり大きく開きそうなカジカが狙っている。じっとしていて傍にふらついてきたヤマメをひと呑みである。あの見るからに美しいヤマメも、あんなカジカにあってはひとたまりもない。こんなフィルムを地道に撮り続けているスタッフを抱えられるNHKは素晴らしい力を持っている。これだけのチャンネルを持っている理由も納得できようというものである。民放局では悲しいかな、BSを持ってみてもコンテンツを次から次に提供できる力がない。テレビショッピングばかり放映しているのなら、持っている意味もない。こんな状況で、なんでデジタル化しなくてはならないのか、全く理解できない。2011年が来たら必ず大騒ぎになる。ならないわけがない。
 そんなことはちょっと置いておいて、問題はこの番組が撮影されたサンル川にダムを造ろうとする北海道開発局旭川開発建設部と建設業界とそれにまつわる政治家の定見のなさである。この川に一度ダムを造ってしまったら、それを境に私たち日本人は金輪際この川を再生することができないのである。ダム建設で儲かる人間にとってはたった一度の、売り上げである。しかし、その後の私たちの子孫からは一切、全くこの自然を取り上げてしまうのである。経済を活性化させるということは未来から資産を取り上げると云うことであって良いのだろうか。いつもダムが造られる時には魚の環境を保全するんだというセリフが語られ、挙げ句の果てに全く機能しない魚道を造り、水位の大変化でもちろん生態系はぼろぼろにされる。そんなことを何十年も繰り返してきた。最後の最後まで壊し尽くして、その後はどうするつもりだろうか。知らん顔して終わりだろう。守る会ができている。