ほぼ足りてまだ欲 その先

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中国新聞「戦争花嫁 in USA」

 昨日書棚の奥から見つけ出してきた1989年(平成元年)の中国新聞の連載特集をためつすがめつしている。全部読み、調べ終わってから書けばよいようなものだが、そうすると書くのを忘れてしまいそうだからその場その場で書いていく。やはり連合軍のベースがあった地域から結婚して行かれた方が多いから共通したキーワードもあるのだろう、各地で横の繋がりの会もできていたようである。第4部「異郷に築いた城」になって「その5 イワクニ会」ではカリフォルニアの南、サンディエゴの南にあるチラビスタという街に「イワクニ会」が構成され、横の繋がりができていたと書かれているし、「その6 老後の備え」ではワシントン州のタコマにつくられた「たんぽぽの会」もそうした横の繋がりとして機能していたことが分かる。こうした各地の横の繋がり会が基礎になって下に書くように「戦争花嫁渡米40周年記念大会」が開かれ、ここから日系国際結婚親睦会なるものが構成されたと2002年に芙蓉書房出版から刊行された「戦争花嫁 国境を越えた女たちの半世紀」という書物の中で林かおりが報告している。「その6」でとりあげられている「たんぽぽの会」の会長だった欣子・カークウッドさんは1999年に多分67歳で他界されておられるようだ。
 フロリダ沖縄県人会はその会員の全員がこうした国際結婚で渡米した人たちで構成されているようである。多くのこうした横の繋がりの会報のバックナンバーは国立国会図書館の「日系移民関係資料刊行物」の中にありそうである。やっぱり行ってみようか。
 1988年10月にワシントン州オリンピアで「戦争花嫁渡米40周年記念大会」が開かれたことをきっかけにこの動きはアメリカとオーストラリアでのいわゆる「戦争花嫁」の繋がりを作った。「戦争花嫁」という言葉は今の世代にはなんの抵抗もないのかもしれないが、戦争直後を知る世代にとってはその人ごとにその人ごとの定義を持っている可能性がある。暗いイメージや、暗い先入観を持つ人がどうしてもいることは否定ができないからその使い方には慎重さが求められる。だけれども、発言をする人たちの間からは時間が経つに連れて抵抗感よりもむしろさばさばと語る、そして語ることによってその時代の重要な一コマを風化させるべきではないという気持ちが感じられる。
 この記念大会から6年後に1994年にハワイのホノルルで第一回の日系国際結婚親睦会世界大会が開かれた。
 1997年には会津若松市で第二回世界大会が開かれ、松井久子監督の映画「ユキエ」が上映されたそうだ。この映画は吉目木晴彦芥川賞受賞小説『寂寥荒野』を原作とするいわゆる戦争花嫁が認知症を病むというストーリーで異境の地に暮らすエスニックの課題を浮き彫りにしたものである。この時点では私はまだこの小説の存在を知らず、2000年になって初めて大学の恩師のお一人であり、立川市にある高齢者ケアの総合施設である至誠ホームの理事長をされている橋本正明先生にこの小説をご教示頂き、大変に共感を覚えた。そこから有吉佐和子の小説「非色」を知った。
 1999年10月には第三回世界大会が米国カリフォルニア州、ロス・エンジェリスで開かれた。米谷ふみ子さんが基調講演者だったという。そして2002年5月に第四回世界大会が別府で開催されている。この直後、6月第2週に在豪州の戦争花嫁の皆さんのお世話をしておられて、キャンベラのWar Memorialで仕事をされている田村恵子氏(上記「戦争花嫁 国境を越えた女たちの半世紀」の高津文美子と林かおりとの共著者)に初めてお会いしていたが、残念なことに私はこの世界大会のことを全く知らなかった。田村恵子氏には「Michiko's Memories」*1というやはり在豪の戦争花嫁の方を取り上げた著作がある。英文で書かれた日系戦争花嫁の著作では「Tsuchino - My Japanese War Bride」Michael Forrester著 2005がある。この著作のまえがきは戯曲「Tea」の作者でUSCの教職にあるVelina Hasu Houston(こちら)が書いている。そしてはじめにとして日系国際結婚親睦会のKazuko Umezu Stout会長が筆を執っておられる。
 戦争花嫁に関して日本で出版されている本はさほど多くなく、前述のものも含めても数点ではないかと思う。

戦争花嫁―国境を越えた女たちの半世紀

戦争花嫁―国境を越えた女たちの半世紀

アメリカに渡った戦争花嫁

アメリカに渡った戦争花嫁

「戦争花嫁」五十年を語る―草の根の親善大使

「戦争花嫁」五十年を語る―草の根の親善大使

恩讐の果ての故郷いとしき―もうひとつの戦争花嫁

恩讐の果ての故郷いとしき―もうひとつの戦争花嫁

*1:現在では豪州の大手書店Dymocksのサイト(こちらからpdfでダウンロードして求めることが可能。