ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

温泉街散歩

湯田中温泉

 湯田中温泉に「逗留(それほど長いわけではないけれど)した」といっても駅の直ぐ傍で、湯田中の温泉街からは全然はずれていた。で、今日の帰りのバスがやってくるのは午後2時頃の予定であるというだけでなくて、ホテルの部屋からは10時には出されてしまい、風呂も掃除中なので入ることもできないので、降りしきる雪の中温泉街散歩に出かけた。当然坂道があるわけで、いつもの靴を履いてきてしまったが、実は奥の手がある。昨年の正月はじめに出かけた高山・白川郷旅行で入手したスパイク付きゴム製アタッチメントを持ってきたのだった。これをつけると足の指の付け根あたりと踵にスパイクがきてそれはそれはもう万全というものである。検索するといろいろな種類のものが売り出されている。これの欠点は後で行った渋温泉の通りのように雪がつかないシステムにしてあるところではこまめに脱がないと「カチャカチャ」いって歩きにくい。つまり最も効率的なのは長靴に決まっているのである。
 湯宮神社から突き当たりの梅翁寺への通りをだらだらと上がる。時々車が通るくらいで雪の中静かな大晦日だ。そんなに広くない道を無理矢理追い越していくような車は大体ナンバーを見ると都会のナンバーがついている。待てないのかねぇ、こんな雪が降る中なんだから。湯宮神社まで来てみると今夜の初詣の準備に余念がない。大分準備は進んでいるようだ。
 そのすぐ横には「わしの湯」と書かれた外湯がある。女湯の方にどなたかが入っておられるようで外に傘が立てかけてある。外湯は9軒あるそうだけれど、組合で運営していて鍵を持ってこないと入れない。つまり昔の野沢の共同浴場のようなわけにはいかない。しかもかつてよっぽど悪いことをした奴がいるらしくて組合はすっかり懲りてしまっているらしい。私が泊まった宿の女主人は「とにかく評判が悪いんであんまり歓迎していません」とハナからお断りの雰囲気満載だった。毎月26日(フ・ロ=風呂の日なんだそうだ)の朝9時から午後3時まで、そのうちの7つのお風呂を無料開放するとこちらには書いてある。
 湯田中温泉では共同浴場の他に湯めぐり手形なるものがあって、宿泊客は600円、日帰り入浴客は倍の1200円で他の宿の温泉、三ヶ所に入れるというシステムが売りである。これは結構美味しいだろう。しかし、私は利用しなかった。最後の日は10時にチェックアウトで出発が午後2時だからこの時に利用できるかなと思ったのだけれど、多くの宿はこの時間帯に大浴場の掃除をする。ひとつひとつあたっていくと入れる宿もあるそうで、ご一緒したご夫妻は入ってきたと仰っておられた。マメでないとだめなんである。私は雪の中を歩くだけで疲れてしまって気力がなかった。観光地もネットで見ただけと現地に行ってみたのでは概ね食い違いがあるものだとは理解しているけれど、それでもやっぱりちょっとがっかりしてしまう。
 「よろづや」という宿が湯田中温泉の中では一番大きいのかもしれない。随分洒落た大きな宿で、ネット上で見ても結構良い値段がしているが、それなりのようである。

渋温泉

 さて、横湯川の川上にある渋温泉に向かう。平和の湯の方へ行けば良かったのに、そのまま川っぷちまでずんずんと降りていってしまった。交番というよりは警察と呼んだ方がよいような大きな「山ノ内交番」でお巡りさんが駐車場の雪かきをしているのを横目で見ながら信号まで出てしまうと、なんとそれは大噴泉のバス停だった。あとは降りしきる雪の中を黙々となんの情緒もない道を歩く。
 安代(あだい)温泉のバス停のところで裏に入ってようやく石畳を歩く。渋温泉にも外湯がいくつもある。そしてこっちはまだ巧い具合に運営がされているらしくて大きな木札を持った人が雪の中風呂桶を持って歩いていく。望外に若い人たちが多いのに驚く。勿論地元の方も木札のついた鍵をぶらぶらさせておられる。中にはその鍵がぶら下がったままの扉すら見かけたものだ。多分湯田中に比べたら渋温泉の方が通りも狭いし、奥だから落ち着いているのかもしれない。九つの湯全部を巡って手拭いにスタンプを押すという企画もあるらしくてそれを持って歩いている人も見かける。ここの通りは雪が積もらない。滑り止めを外した。中途半端に古い宿舎がある湯田中よりもこっちの方が古いものを古いとして生かしているような気がする。まぁ、泊まって見ないとわかりゃしないんだけれど。
 こちらでは前を通って「お〜!こりゃ泊まってみたいなぁ」と思ったのは「金具屋」という変わった名前の宿だ。随分古いらしくて木造三階建てだか四階建て。良いねぇ、こんな具合の宿は。(→こちら)。途中で外湯のひとつの外側にある蓋を地元の方がひょいと開けるとそこにお湯が流れていて、その方はそこから長い柄のついたひしゃくで汲んでは雪が積もった車に駆けておられた。簡単に雪が落ちるという寸法である。思わず「良いですねぇ!」といってしまう。こちらも奥まであるいていくとドンつまりが横湯山温泉寺という開山なんと700年だというのだ。ここでも今夜の初詣の準備が進んでいる。山門からは雪囲いのビニール囲いがされていて、雪に悩まずに参拝が可能だ。こちらには外湯の「番外薬湯・信玄かま風呂」があってこれは和式蒸し風呂なんだそうだけれども、ここだけは大晦日の今日はお休みだそうで、上がってきた人が「なんだよ、休みかよぉ〜」と嘆いておられた。
 やれやれ渋温泉も奥まで来たから帰ろうかと時計が11時過ぎになるのを見ながら川の方へ歩いていくと、偶然に、ツアーでご一緒していたご夫妻と遭遇。お話をお伺いするとこの渋温泉に麻婆・ラーメンで知られたおばあさんがやっておられるお店があるんで一緒に行かないかという話。面白いからご一緒しますとはいったものの、まだ開店時間にはしばらくあるからと、裏道にある温泉饅頭やさんに向かう。歴史のあるお店のようで店内にはお菓子のコンテストで貰った賞状が所狭しと張り出してある。蒸したてのおまんじゅうを戴いたがとても美味しい饅頭だった。「小古井製菓」というお店だが、なんと読むのだろうかと首をかしげる。お伺いしてみると「こごい」さんだそうだ。この近辺には「古」という字がついた地名、苗字が良くある。こちらのお店でその麻婆ラーメンのお店のことをお伺いすると「あぁ、あの豆腐ラーメンですね」と仰る。「トーフ・ラーメン」と聞くとなんかぴんと来ない。

「米龍」

 で、そのお店「米龍」に行ってみるとなるほど確かに看板には「とうふラーメン」と書いてある。まだ店は暖簾が出ていないが開けてみると電気もついていないで仕込みの最中のようだ。お願いをして中で待たせて頂く。お話をお伺いしているとおばあさんはもう80歳代だというのだ。私達四人がくだんの麻婆ラーメンをお願いして話に熱中している間に若いカップルが一組、歳の差のある女性二人組が一組み入ってきた。カウンターには6-7席、あがりがまちに一組み、たたきに一組みで精一杯入ったとしても15-6人だろう。途中からもう一人のより若いおばあさんがやってきて手伝い始める。出てきたのはまさに麻婆ラーメンだった。あっつい麻婆ラーメンを写真に撮ろうとするとレンズが曇る。あとから入ってきた夫婦者のお客と米子おばあさんとの話を聞いていると豆板醤もこのお店では分けているらしく、その地元の人らしいお二人が「この前貰って帰ったのはもうなくなっちゃったから今日はまた分けてくれないかなぁ」といっておられた。量も十分あってお腹一杯になった。確か一杯650円ほどだったか。
 さてさて、どうやって湯田中まで帰ろうかということになるが、もうこの雪の中を歩いて帰る気にはなれない。バスが志賀から降りてくるのを待つことにする。和合橋の停留場まで行く。バスはなかなか来ない。寒い。手が痺れる。足踏みをする。ようやく来た。バスで下れば7-8停留所だ。210円だったかな・・もう記憶にない。連れあいは駅の裏の足湯によって来るというので、一瞬でも早く座りたかった私は用心しながら坂を登る。