ほぼ足りてまだ欲 その先

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なんだか安堵感?

新日鉄八幡製鉄所火災、最大1万トン減産で済む見通し
 新日本製鉄八幡製鉄所で29日に発生したコークス工場火災の影響は、最大で1万トンの減産でとどまる見通しになり、関係者は胸をなでおろした。同製鉄所では自動車用薄板など高級鋼材を生産。2007年度の鋼材生産実績は422万トンで、新日鉄全体の12%に当たる。

 コークスは製鉄には不可欠で、供給が止まったことから同社は29日午前11時半から高炉などを停止。その後、製鉄所内の在庫やグループ会社からコークスの提供を受けて、午後6時過ぎから高炉などの再開作業を始めた。休止していた製鋼工場なども30日未明までに再稼働する見通し。コークス在庫は1週間分程度。コークス炉の改修が遅れれば、他製鉄所や他社から調達する必要がある。

 コークス炉は鎮火後、警察と消防による現場検証を経て、点検と修理に入るため、少なくとも操業再開までに数日間は要する見通しだ。ただ、鋼材の供給先のトヨタ自動車は「一両日の供給停止なら問題ない」と話しており、大きな混乱は避けられそうだ。

 鉄鋼需給が逼迫(ひっぱく)する中での事故による操業停止に、新日鉄八幡製鉄所藤井康雄所長は「常々、事故のないようにと努めてきたのに残念」と苦渋の表情を浮かべた。【石戸久代、宇田川恵】毎日新聞 2008年7月29日 21時15分(最終更新 7月29日 23時04分)

 朝からテレビでしょっちゅう映し出されていた八幡のコークス炉火災は辺り一面に炎が上がり、黒煙がもくもくと、見るからに熱と煤煙を放出しまくっている様が痛々しかった。さぞかし、風下の地域は大変な状況になっていることだろう。コークス炉はそれでなくても原料炭を蒸し焼きにして水蒸気を添加するから周りにいると昔懐かしいにおいというとおかしいけれど、石炭系のにおいがするだけではなくて、遠くから見ていても大量に白い蒸気があがったりして如何にも経済の発展のためにはみんな我慢しようなぁ〜!的な風景である。しかし、そうした製鉄所の周りはほとんどが関係会社だったり、歴史的に見てもその工場の城下町的生業だったりするんだからそう簡単に文句が出てきたりはしない。ましてや日本最古の官営製鉄所だった八幡なんだから会社もぴりぴりなんてしていないのだろうか。
 テレビに出てきた総務グループの何タラさんにしたって、「こんな事故を起こしてしまって近辺の住民の皆さんに不安を与え、なおかつ煤煙でご迷惑をおかけしてまっこと申し訳ありません」という雰囲気は全く感じられなかった。「鎮火するまでに24時間ほどかかるんじゃないだろうか」と解説していた感じである。
 ベルトコンベアが落下して下にある(多分)コークスガス管を破壊し、漏れたガスに引火したという原因を発表したのは一体何時頃のことだったのだろうか。午前中に見ていたテレビではこの原因についてはふれられていなかったので、一体何故ここまで火災が広がったのかと思っていた。それにしてもコンベアが落下した原因はいったい何だったのか。その点についてはまだ報じられていない。鎮火後の検証をしてみないとわからないのだろうか。
 鉄鋼業界はいまやウハウハで、なにしろ粗鋼〔高炉で産出される一次産品)の生産量は2007年実績で、バブルのピーク時の1億2000万トンを遙かに超えているというのだからこれで不況なわけがない。それでも原材料の鉄鉱石や原料炭は当時の価格にしたら驚くような値上がり状況である。これは原油なんかと違って先物相場にファンドが投資しているわけではなくて、中国が引っ張る世界的鉄鋼需要の故である。だから、オリンピック、上海の万博以降が問題になる。それでも中国の鉄鋼需要はどんどん成長するだろう。そうすると原材料は下がらないのではないだろうか。中国は市場を抱えているから強気で原材料産出国に乗り込んでいって押さえようとする。
 たとえばオーストラリアでいえば、それまで鉄鉱石産出会社、原料炭産出企業のほっぺたを新日鐵を中心とした日本の業界が札束で叩いてわがまま放題に買ってきた。いま中国が参入してきて、そのつけを払う結果になっている。「原材料の値上がりが・・」と二言目にはいい、「自動車業界の対米輸出の先行きが不透明」として人件費を切り続けてきたけれど、どちらかというと「これまでの私たちの経営があまりにも不遜であったために」という言い訳の方が正しいのではなかろうか、と申し上げたい。
 今回のこの記事を見ても、「なんだ、それほど新日鐵にとっては致命的なダメージではなかったねえ、良かった、良かった」という安堵感のようなものが感じられる。これは果たしてそういう事件だろうか。