2009年1月14日、社団法人日本経済団体連合会は2009年優先政策事項なるものを発表した。この10項目をポイントとして政党を評価して献金の基準にする。
昨年の評価は以前にも引用した。
自民は、5段階で最も評価の高い「A」が、前回の昨年(2007年)11月の評価に比べ1個増え過去最高の10個となったが、「C」が2個多い5個となり、トータルのポイント評価は下がった。民主も、前回と同様に「A」がゼロで、「D」が4個から6個に増えるなど、評価を下げた。(産経ニュース2008.9.17 20:50)
では昨年の優先政策はどうだったんだろう。
2008年 優先政策
- 経済活力、国際競争力強化と財政健全化の両立に向けた税・財政改革
- 将来不安を払拭(ふっしょく)するための社会保障制度の一体的改革と少子化対策
- 民間活力の発揮を促す規制改革・民間開放の実現と経済法制の整備
- 日本型成長モデルの実現に向けたイノベーションの推進
- 持続可能で活力ある経済社会の実現に向けた実効あるエネルギー政策と地球環境対策の推進
- 公徳心をもち心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進
- 個人の多様な力を生かす雇用・就労の促進
- 道州制の導入の推進と魅力ある経済圏の確立
- グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進
- 新憲法の制定に向けた環境整備と戦略的な外交・安全保障政策の推進
というわけで今年の10項目である。
2009年 優先政策
- 緊急・大型の経済対策による景気刺激・金融安定化と税・財政の抜本改革の推進
- 安心で持続可能な社会保障制度の確立と少子化対策の推進
- 民間活力の発揮を促す規制改革・民間開放、電子行政の実現と経済法制等の整備
- 産業の国際競争力強化に向けたイノベーションの推進
- 持続可能で活力ある経済社会の実現に向けた資源・エネルギー政策と地球環境対策の推進
- 公徳心をもち心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進
- 雇用のセーフティネットの強化と雇用・就労の多様化の促進
- 道州制の導入の推進と魅力ある経済圏の確立
- グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進
- 戦略的な外交・安全保障の推進と憲法改正に向けた合意形成
各該当項目を比較してみるとわかるけれど、総じて昨年の方がそれでも辛うじてイメージが湧くけれど、今年の書き方はなんだかおざなりな抽象性を抱え込んでしまった。大きな違いはやっぱり「雇用のセーフティネットの強化」という語句だろう。ここをただ単に「セイフティー・ネット」としなかったところが経団連たる由縁だろう。
では「雇用のセイフティー・ネット」とは何か、といってしまうとそんな限定されたセイフティー・ネットなんていうものは存在しないはずだ。今回の内部留保丸抱えの企業群が実施した派遣社員のぶった切りでもわかるように、住宅すら本来的にいったらその中のひとつの要素として認識するべきで、この表現のやり方がもう既に限定的である。
前回は「新憲法の制定」としていたものが「憲法改正」となっているのは一歩後退したということか。ま、現実的には大きな差はないけれど。
上記セイフティー・ネットの考えとこの憲法のことを考えると、経団連諸兄の考え方はあまりにも自陣の利益追求の立場に立った考えで、底が浅すぎる。もちろん利益を上げ得ない企業というのは資本の再生産が行われないことになるのだからあり得ないわけで、利益を上げなくてはならないのだけれど、社会のバランスを考える、という人間的発達成果を求めていないスタンスがあまりにも情けない。
これは社会性という意味で成長が見られていないという表現でも良いのかも知れないが、今でも感性はあの「高度経済成長期」の「猪突邁進」と大きな変化は起きていないのかも知れない。