ほぼ足りてまだ欲 その先

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ノーベル平和賞余波

 バラク・オバマノーベル平和賞に選ばれたことは米国のカウンター・パートからは相当にねたまれているらしくて、今や大騒ぎだ。

 ギブス大統領報道官に記者団が「冷戦終結に道を開いたレーガン大統領は受賞していない」「ウィルソン大統領以降の受賞者はカーター元大統領、ゴア元副大統領と民主党員ばかりだ」と選考に関する質問を次々に浴びせ、報道官は「私はノーベル賞委員会の一員ではない」と懸命にかわした。
 一方、保守派の論客からは「大統領は受賞を辞退しろ」(グレン・ベック氏)、「ノーベル賞委員会は自らの権威を失墜させた」(ラッシュ・リンボー氏)と強硬な批判が相次いだ。平和賞の受賞に保守勢力が一斉に反発を始めたことで、医療保険制度改革などの内政面で目立っていた民主・共和党間の亀裂が、外交分野でも一層鮮明になるのは確実と見られる。(2009年10月10日21時30分 読売新聞)

 民主党ばっかりが受賞しやがって、という愚痴には大笑い。あんたらがそれに匹敵するだけの政治活動をやってきたのかどうかを良く胸に手を当てて考えてみたらいい。ブッシュ親子を担ぎ回っていた君たちが何をしてきたのかを。
 バラク・オバマを選び出したのはノーベル委員会であって、どこかの国の勲章じゃないんだから業界つながりのなぁなぁ叙勲とは大違いで裏があるわけでもないだろう。
 こんなバカなことをいっているのは米国共和党のトンデモネオコンだけかと思ったら「ロシアの極右政党、自由民主党ジリノフスキー党首は10日、オバマ米大統領ノーベル平和賞を辞退するよう勧める書簡を送った」(共同通信)という話もあるそうでどこに行っても右翼諸兄は自分たちだけが優秀なんだという意識に凝り固まっているものらしい。
 では某国のmsn産経ニュースは如何かと思うと「セオドア・ルーズベルト1906年)、国際連盟創設を主導したウッドロー・ウィルソン(1919年)だが、いずれも受賞理由とは裏腹の政治状況に直面するなど、現職の米大統領が「平和の使徒」となる難しさを示している」(msn産経ニュース 2009.10.10 17:48【ワシントン=山本秀也】)と伝えているのはやや斜め目線だけれど、例の産経抄と来たひにゃぁ、思いっきりのナックルボールで面白い。ちょっと長いけれど、これは記念に取っておきたいから貼り付けておこう。

産経抄】10月11日 2009.10.11 03:03
 世の中は面妖なことだらけである。小学生のころから賞と名の付くものに縁がなく、賞といえば競馬の天皇賞が真っ先に思い浮かぶ身にとっては、功のあった人間に金品などを与えてほめるのが賞だと思っていた。
 ▼オバマ米大統領へのノーベル平和賞授与は、ご本人も「私が成し遂げたことに対してではない」と語るように、未来への希望を託した賞の前借りだ。この伝でいけば、25%の温室効果ガス削減を宣言した鳩山由紀夫首相にノーベル環境賞が授与される日も近い(そんなものがあればだが)。
 ▼ノーベル賞委員会は「核兵器のない世界」を訴えたオバマ氏を高く評価したが、35年前にも核兵器反対の姿勢が評価されて受賞した政治家がいた。佐藤栄作元首相である。大統領の大先輩というわけだ。
 ▼非核三原則が決め手になったが、中国の核実験成功(昭和39年)に危機感を抱いた佐藤氏は日本の核武装についてひそかに研究させている。その結果、米国に「核の傘」を確約させる一方、日本が核拡散防止に一役買うことが国益にかなうと判断したようだ。
  ▼当時の新聞をひっくり返してみると、いずれも1面トップで扱ってはいるが、称賛の嵐というわけではなかった。小紙は「佐藤さん最良の日」と好意的だったが、朝日新聞は社会面で「エッあの人が」。社説でも「どうもしっくりこない」とちっとも喜んでいない。オバマ礼賛とは大違いである。
 ▼その佐藤さんは沖縄返還を成功させたが、非核三原則とは裏腹の「核密約」という細い綱を渡ったとの証言は数多い。民主党は密約暴露に熱心だが、他策はあっただろうか。「日本は米国に依存しすぎていた」との鳩山首相の言動は、先人の苦労への思いやりがあまりに欠けている。

 ね?
 大変に面白い。突っ込みどころ満載とはこのことだろう。「賞」で思いつくのがさすが産経だけに「天皇賞」だというところからもう大爆笑。佐藤栄作バラク・オバマの大先輩だなんて持ってくるというのがさすがっ!と大向こうから声がかかろうというものだ。佐藤栄作が首相退陣の時の記者会見で、新聞記者に「出ていけっ!」と追い出した時に産経新聞だけは残して貰ったとでもいうのかね。さすがに密約に目をつむっているわけにはいかなかったらしいけれど、他にどんな手があったというんだという論調で、平和賞にふさわしくない行動を取ってきた栄作を肯定していくのは辛い。だったら栄作はノーベル平和賞を辞退していたら良かったのに、これでは単なる策士でしかない。東アジア共同体構想からなぜ米国を外すのかというキャンペーンを張っている産経らしい締めくくりで面白かった。
 スポーツ報知は「就任わずか9か月での受賞に世界中から批判の声が相次いだ」と書いていたけれど、為にする記事としかいいようがないね。ま、報知だからしょうがない、といういい方になってしまうのかも知れないけれど、大間違いだと指摘しておきたい。