先日「岸壁の母」の二葉百合子が引退した。「声が出るうちに」という。1931年生まれの78歳。芸能生活76年は凄い。石川さゆり、坂本冬美といった弟子の面倒はこれからも見るという。どうしても過去の名声が忘れられなくて、あのスポットライトが忘れられなくて、どこででも浴びた拍手が忘れられなくて、皆さんいつまでもお唄いになる。アマチュアとしてならいくらでもどこででも唄えばいい。しかしプロフェッショナルとしては苦しい。人間の身体は加齢とともに劣化する。声帯だって同じだ。おじさんたちのバンドが復活してきて最初に分かるのは「あぁ、声が出ていないなぁ」という点だ。その点ではずっと歌い続けてきている人は違う。
しかし、二葉百合子のように思い切る、ということはなかなかできるものではない。お付き合いだってあるし、あれだけのメガヒットを持っている人はいつまでも需要がある。しかしながら、それを思い切るというのは大変だ。だから彼女はあの記者会見で一生懸命お詫びと感謝をしていたのである。
二葉百合子のあの歌は私のフェヴァリット・ソングではないけれど、今回はひどく共感したのである。
