ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

映画

 明日で上映が終わるという映画を見に行こうと地下鉄に乗るとそこに先日の映画で一緒になったお笑いの「よしえちゃん」(こちら)に遭遇。NHKの番組に出たという。そりゃ凄い!「タイム・スクープ・ハンターわれら時の番人」22日(土)00:45~総合、24日(月)17:00~BS2、26日(水)15:15~総合。
 明日で終わってしまうという映画は銀座シネスイッチの「LOVELY, STILL(邦題:やさしい嘘と贈り物)」で、主人公はスパイ大作戦でよく見ていたMartin Landauで今年でもう80歳になる。
 ところが自分で調べた上映時間に逢わせて行ってみると、それはもう一本の「Le Concert(邦題:オーケストラ!」の方で、どうせだからと入ってしまう。ずいぶんな人の入りで、入れ換えの時には列を作っている。そんなにこっちは人気があるんだろうか。しかし、独り身の便利なのはこんな時で、ど真ん中にぽつんと空いていた席に滑り込んでしまう。隣は如何にも律儀そうな壮年のサラリーマン然としたスーツ姿のおじさんで、この人は上映直前に席を外したと思ったら売店で仕込んできたと覚しきせんべいを良い香りをさせて食べていた。反対側はショールと覚しき布を席においたままいつまで経っても本人が現れず、これまた上映間近にやってきたのは30代と覚しき妙齢の女性だったのだけれど、私は全く意識しなかった。それだけ映画が面白かったということでもあるけれど、反対側のおじさんの傘が気になって仕方がなかった。 
 観客の中にロシア語が分かる人が数名いるらしく、セリフに呼応して笑う。確かに奇想天外な展開で面白いのだけれど、う〜ん、どこかでこの原案になるようなストーリーに出会った気がするんだなぁ。それにしてもチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をもう一度大きな音で聞きたくなるな、この映画は。面白かったのは30年ぶりに集まって演奏を始めた時の下手さ加減である。上手い人たちが集まって普通に演奏したら必ずや旨く演奏できてしまうだろうに、わざと下手に演奏するというのは難しいだろう。ま、チューニングを意図的に外せばよい、ということか。
 間に時間があったので山野に入ってAccuJazzで聴いてこれはもう一度聴いてみたいなぁと思ったCDを探す。一枚はBucky Pizzarellのものなんだけれど、とっくのとうに廃盤になっているものだった。Amazon USAで探したらなんと100ドル近い値段がついている。もう一枚はEarl Klughの「Naked Guitar」というアコースティックでの演奏もの。山野3FのJazz Guitarの棚に、そもそもEarl Klughがなかった。(いつも思うのだけれど、外国人のCDを「五十音順」に並べるのは如何なものだろうか)。
 さて、それからお待ちかねの映画である。前半は淡々と独居のお爺さんの生活を描く。スーパーのレジ横でお客の荷物を袋に詰める仕事をしている。向かいに娘と老齢の母親が引っ越してくるところから、俄然この爺さんの生活は彩りがつく。デイトをし、フレンチを食べ、クリスマス前の一週間はどんどんバラ色になっていく。あぁ、良かったねぇというところからどんどん気になる画面展開がスクリーンに提示される。最後に来てそのすべてが氷解する。この映画はわれわれ世代にとっては(いやすべての世代にとっても)きちんと正対して観るべきものだと思う。
 この映画の観客はもう一本と較べて実にわずかなもので、多分この回は20人もいなかったのではないかと思われるほどだ。こういう映画が大きく取り上げられることもなく、この程度にしか観られていないというのははなはだ残念至極だ。渡辺謙の「明日の記憶」に較べたら数段完成度も高く、脚本も巧くできている。Ellen Burstynのおばあちゃんは愛らしい。
 何よりもこの映画の脚本、監督を手がけたNicholas Facklerは殆どデーターがアップされていないのだけれども、どうも20歳そこそこの青年のようだ。一説にはこの映画を制作した時にわずかに23歳だという。どうしてそんな若者にこの発想がもてたのだろうか。驚きだ。彼はこれからも佳作を提供してくれそうな予感がする。
 この映画のロケ地であるNebraska州のOmahaの街にいってみたくなるではないか。
 こういう映画を観たあとで日本の映画の予告編を見るとどうしても食指が伸びない。いくらなんでもそんな筋立てってないだろう、というものばかりが目につく。動物、子供、今にも死にそうな病気の女性、涙なくしてはいられないだろう!どうだ!?といわんばかり。みんなそういう筋立てをスクリーン上で見て、あぁ自分はそうじゃなくて良かったと思うのか、あるいは心のとげを溶かすのか。安手の癒し本か。