ほぼ足りてまだ欲 その先

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少年殺人犯

 集英社インターナショナルtwitterが《戦後の犯罪統計を見ると、もっとも殺人を犯す比率の高いのは──これは言いたくなかったけれど、団塊の世代なのです。それを棚に上げて「今どきの子どもは」と言う》と書いた。
 団塊の世代としてはそりゃもちろんカチッとくる。多分これを書いた人は団塊世代よりは若い世代で、むしろ「今時の子ども」により近いと自負している年代の筈だ。「そう判断する出典はなんですか?」とお伺いしたところ、Wikipediaをあげる。全く私のような発想だ。そこからつながってきたのは「戦前の少年犯罪」という本を書いた方のサイトに掲げられた数字である。
 ただ、残念なことに世代別に上げたデーターというのはこの著者の方がまとめた数字で、そのままどこかにそれがエビデンスを持って書かれていたわけではない。警察庁の「犯罪統計書」から各暦年の未成年者による殺人犯検挙数を拾い、当該少年人口10万人あたりに置き換えた数字で比較している。→ こちら
 それによると、1945年以降、つまり終戦後の混乱期から1972年にいたる間が最も数字が高く、そのピークは1951年の2.55人/10万人となる。
 この年は19歳が1932年生まれ、つまり終戦時に13歳だったということになる。
 一方、団塊の世代というのは1947-49年生まれを差すのが常識的であるが、彼等(私も含まれるのだけれど)のうち最も若い1949年生まれが成人したのが1969年にあたる。
 つまり、集英社インターナショナルが指摘した「もっとも殺人を犯す比率が高いのは団塊の世代」という解釈は間違っていて、むしろ、それは戦後の混乱期から高度経済成長が安定期を迎えるまでの期間に凶悪犯罪が少年にまで高かった、という解釈をするべきだったのではないだろうか。
 このデーターは該当する少年人口10万人あたりに何人が殺人を犯して検挙されたのかという人数を意味する点をもう一度考えると、絶対的な人数の多かった世代においてはその犯罪者の絶対的人数はより多くなるわけで、そのピーク時には448人が検挙されている。
 もうひとつ問題なのは、集英社インターナショナルが「もっとも殺人を犯す比率の高いのは団塊の世代なのです」と現在形で書いていることにある。団塊の世代年代を含む1925年から1959年に生まれた年代が少年期に少年殺人が多かった、と表現するのであれば、それは大正解だけれど、「殺人を犯す」と現在以降の時節にして表現したのは大きな間違いである。