ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

散歩

 かねて都バスの草63(浅草雷門-池袋東口)で白山上に差し掛かると、バスの窓からよく見えるところにお客と店の人が嬉しそうに語りながらものをやりとりしている「小田原商店」という惣菜屋が見えて、一度入ってみたくて仕方がなかった。しかしながら、そこを通りかかるときは行きは目的があって乗っているから途中下車する気にはなれないし、帰りはもうくたくたで、そのまま座席に座って揺れながらうとうとしかかっているというわけで、なかなかチャンスが見つからない。これはもう、思い切ってそのためだけに行ってみるしかないというわけでふんぎった。それにしてもあのバスしか方法がないのだろうか。日暮里の駅から歩くんじゃ、そりゃ相当なことになるし、何より坂道を「下る」のであればまだしも「登る」なんてとんでもない。結局バスで白山上まで行ってしまった。
 本郷通りに面したところに向丘高校がで〜んと建っているんだけれど、この高校の校舎は一体いつこんな近代的な校舎になっちまったんだろうか。昔、この前を車で通りかかったときにはなんとも苔むしたような雰囲気だったような気がしたのに、これではちょっとハナから鼻白む思いだ。ところがその近所のごく普通のガラス戸のお宅が目に入ると中にはなにやら木がゴロゴロと見えている。なんだろうと覗き込むと、これがどうやら木刀の様子で、ゴロゴロと見える木は多分あれが乾燥させている樫の木ではなかろうか。こうした職人の方の家が見られるのも嬉しい限りだ。
 とって返しておもちゃ屋さんの前を惣菜屋さんに向かっていくと豆腐懐石の「五右ヱ門」がある。いつの日かここで湯豆腐なんぞ食べたい。今日はそういう日じゃない。その先はできたばっかりのマンションで下に「au」が入っている。その次が本屋さんで、その先が雑貨屋さんだ。昔ながらの雑貨屋さんで中を覗くと獅子舞の獅子頭みたいなのが置いてある。ありゃ一体なんだろうか。
 反対側に表にまで商品が溢れている文房具やさんがあるんだけれど、一歩足を踏み入れるとこれは凄いのだ。小学生の女の子達が一斉に喜ぶだろうと思われる、シールやキャラクター文具なんかの山また山だ。確かに中に入ってみると女の子達とその保護者と覚しきお母さん達ばっかりで、こんな爺さんが入っていると違和感を憶える。多分その代わりにあのおもちゃ屋は男の子達ばっかりなんじゃないだろうか。
 さてさて、お惣菜屋の扉に手をかけてみたら中には旦那がお一人でお客は誰もいないという一対一だ。私はこういう状況になるとなかなか全部をゆっくりと見ることができないという貧乏性なんであるなぁ。そんなに安い訳じゃないんだけれど、鶯豆やら、黒豆やら、切らずの煮物、ひじきの煮物なんてのが昔のお店の雰囲気で並んでいる。甘酢あん掛けの肉団子を発見。鰊の甘露煮と共に買ってしまう。いや片っ端から本当はツマみたい。
 さて、ここからどこに向かっていくのかということを全く決めていない。しかし、どっちに行くにしたって、ここからならば坂を下るだけで、楽勝なんである。最後は銀座に出たいから取り敢えず旧白山通りを水道橋方向に坂を下りる。だらだらと下り終えるとそこで今の白山通りと合流する。そのちょっと手前にウラに道が分かれているんだけれど、商店街(というほどの商店が連なっている訳じゃないけれど)はそっちになっている。このあたりは指ヶ谷というのが旧町名だったらしくて小学校の名前にも残っている。どんどん行くと今度は丸山福山町という旧町名が説明されている。やっぱり昔の名前が良いなぁ。
 で、実は歩きながら全くなんにも知らなかったというノー天気オヤジなんであるが、どうやらこのあたりは昔は名だたる花街だったらしいのだ。そうと知っていればもっと上からそっちに足を踏み込んでいたのに。なんでそんなことに気づいたのかというと由緒のありそうな建物を見付けたからで、家に帰ってからこの建物の由来を検索していて見付けたのがこちらのブログ。なんとも今からではとても想像のつかない一角だったわけだ。というわけで私が見付けたのはくだんの花街の南端に位置するという「濱乃家」という料亭だったのだそうだけれど、黒塀で灯篭なんぞがあってそれらしい風情もあるけれど、こんな規模だったのかという位のものだ。どうやらこの界隈は焼け残ったそうだけれど、今や戦前の痕跡を見付けるのはもうちょっと上でなくては無理なようだ。
 今では白山通りもバスと都営三田線が走っているわけだけれど、かつては都電が通っていて、私は40年ほど前にその都電で水道橋から乗ってこの界隈にあった楽器屋にコントラバスのエントリーモデル(今でこそこんな表現をするけれど、昔は一番安い奴と表現したね)を買いに来た。現金で買って、その足でまた都電に乗り、水道橋から東京駅、東海道線で横浜、そこから東横線で実家まで持って帰ったのである。どうしてこんなところにまで買いに来たのか、そしてなんでその時にコントラバスが欲しかったのか、全くもって何も憶えていないのである。そのコントラバスは京都の「Chaki」茶木弦楽器製作所(今は有限会社チャキらしい)製造のものでその後何年か大学のサークルの役に立ち、私が卒業したあと弦はそのままにしてあったらしく、ある日、轟音と共にネックが折れたのだそうだ。
 そのまま行くと左側は上り坂で西片で、この先を左に上がって行くと本郷菊坂だ。白山通りの反対側に高い建物と建物の間の路地が見えてそこに「柳町仲通り」なんて書いてある。何があるのかと入っていってみると大きな八百屋があったりして買い物客が出たり入ったりしていて繁盛している様子だ。これを突っ切ると植物園から来る道で、このあたりも戦災では残ったんじゃないだろうか。よく知らないが、そんな片鱗が感じられる。それにしてももう軒並み10階を超えるビルビルビルだからなんだか息苦しい。このあたりでも住友不動産のおどろおどろしいビルはひときわ目立つ。妙に住友不動産ぽい建物だなぁと思うとあたりだった。
 信号をどうしようかなぁと思っていたら向かいにこれは面白そうな建物を発見したら、その上それが古本屋のような具合で、「大亞堂書店」という名前は如何にも戦前からありそうな荒唐無稽なスケールを現す屋号ではないか。帰ってきて検索してみると出るわ、出るわ、こんな建物だからか、何人もの人たちの注目を集めている。ちょっと見、右側はコミック専門コーナーのようで、左から入ると、中にあるものは相当に昔に値段をつけたんだろうかとも思えるのだが、動かしたようにも思えない。誰もいないのかと思ったら奥に男性の方がひとり(古本屋なんだから一人で充分だけれど)iMacの前に座っておられた。残念ながら棚に居並ぶ書籍は私の守備範囲ではなかった。
 出てから文京区のバブルの塔を目指して歩き始めたら直ぐに右側に奥に入る石畳があって、老若男女と云いたいが老々男女が出入りするところがあり、なんだろうと思ったらそれが「こんにゃくえんま」といわれている浄土宗常光山源覚寺だった。一体いつのことで、なんの帰りだったのか全く憶えていないのだけれど、ここをタクシーで通りかかり、その時初めて東京に「こんにゃくえんま」というところがあることを知った。お寺さんのHPにそのいわれがあって「宝暦年代のころ(1751年〜1764年)、眼病を患った老婆が閻魔大王に21日間の祈願を行ったところ、夢の中に大王が現れ「願掛けの満願成就の暁には、私の両目の内、ひとつを貴方に差し上げよう」と言われたそうです。満願の日に、老婆の目は治りました。以来、大王の右目は盲目となりました。老婆は感謝のしるしとして好物の「こんにゃく」を断ち、それを供えつづけたということです」と書いてある。(こちら)。そうと知っていればちゃんとお願いをしてくるんだった。それだけでももう一度行かなきゃならんか。それにしてもこのおばあさん、好物がこんにゃくだったとは。これがもし好物が塩豆大福だったら、ここのえんま様は「しおまめだいふくえんま」と呼ばれることになった訳か。
 後楽園の駅から丸ノ内線に乗ることにした。ここではこの地下鉄は高架になっているから階段を上がることになる。銀座で降りてからどこに行くのかというと今日はビックカメラに下見である。5階にあがってAppleを置いてあるところに行くとお客も多いけれど、店員もたくさんいて直ぐにつかまえることができた。Appleの製品にメモリーやHDDを上乗せした物を置いてあるかと聞くと取り寄せてやらないことはないけれど、そのオプションはポイントにもならないし、値段も変わらないからweb上のApple Storeで買っても同じだというのだ。そりゃ明快だけれど、それって要するにAppleの再販防止法違反にならないのかね?さすがに週末のビックカメラはもの凄い数の客の入りで、4階のキャッシャーなんぞは長蛇の列だ。さすがに何も買う気にならない。1階のテレビ録画機器のところで店員さんをつかまえて聞く。ブルー・レイ・レコーダーで外付けHDDにストレージできるのはどれかというとそれはTOSHIBAの限定機種だけだそうだ。それでもカタログを見たら中には内蔵HDDでも2TBなんてものがある。ところでDVDレコーダーの内蔵HDDにあるかつてのNHK番組で録画プロテクター一回限りの頃のものをどうやったらどこかにフィルできるか、という質問をしたら、多分それは無理だという返事だった。そうか、あの番組は資料として残してあるんだけれど、あのレコーダー共々半永久的(といっても私が死んでしまえば終わり)保存が必要ということになるらしい。
 今、うちのオーディオのFM/AMチューナーが半壊しているのだけれど、その代わりというのを捜したら、たった4機種あるだけだ。今はそんなものでラジオを聞く人はいないのだろうか。NHKのFMをスピーカーから聞くことができない状態に陥っている。
 伊東屋さんに寄って2週間前にお願いした万年筆の修理はどうなったのかお伺いしたら、2週間やそこらではどうやら甘いらしくて、修理の見積もりが出るかでないか位なんだそうだ。4千円以上かかるようなら返事をくれ、それ以下だったらそのまま修理してくれとお願いしてある。なにしろ買った金額が1.5万円である。パイロットの万年筆の安い奴でペン先がMのものを捜すけれど、3000円台のものを試したけれどFもMも殆ど変わりがない。Apple銀座に入ろうとしたら大変なお客の数で止めた。すると以前にも見かけた柴犬を3匹連れた男がまたいて、歩行者天国の車道で通りかかりの客が固まって写真を撮っておって、そのおっさんが得意顔である。前から私が動物虐待だと云っている猫を複数連れ回す男もいるが、こちらと云い、あちらと云いいけ好かない感性ではあるが、ひょっとすると孤独な存在なのかも知れない。
 本日の散歩は以上で約11,000歩。