ほぼ足りてまだ欲 その先

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クラッシック音楽

 私がクラッシック音楽を聴きたくなくなった原因のひとつをあげよといわれたら、即座に思いつくのは高校受験勉強にあるといっても良いだろう。それは一体何よ、といわれるだろう。私の世代は都立の高校を受験するには9科目の試験を受けなくてはならなかった。英数国理社に加えて音・美・保体・技家ってえのがあった。配点に軽重はない。音楽の試験で最も苦手としていたのは、メロディーの4小節くらいが片方に並んでいて、もう片方に作曲者の名前が書いてあって、それを線で結ぶ、なんて奴だった。外国人の名前を覚えるのも駄目だったのに、読めもしない音譜を読んでなんの曲かを発想して、その作曲者の名前を記憶の奥底から見つけ出すなんてことが、この私にできるわけがなかったのだ。
 歌は好きで小学校の時から合唱なんかに参加していたのに、音譜が読めなかったというのは、よっぽど向学心がなかったといって良いかもしれないな。で、高校の入試が終わってから学校に帰って来てみんなで答え合わせをするのだけれど、その類の問題が全滅だったのではなかったか。「音楽の試験をしくじって志望校の最低ラインにどうやら数点足りないらしい」という読みだったようだ。それ以来、クラッシック音楽に対する嫌悪感が増大し、高校の音楽室に良く貼ってあった著名な作曲者の絵やら、石膏像なんてものが疎ましくてしょうがなかった。そういえば高校の各科目の先生の顔は良く思い出すのだけれど、何故か音楽の先生はひとりも私の記憶の中に登場してこない。
 高校では三年の時に流行りに乗ってエレキ・バンドをつくった。学校始まって以来の講堂にエレキを轟かせたグループのひとりだった。なにしろその中に放送部がふたりいたから講堂のマイクとスピーカーを鳴らすのはお手の物だったのだ。まさにRoll Over Beethovenだったのだ。
 そんなことをしていたからここでも一年を棒に振っている間に今度はJazzに目覚めてしまった。大学に入って一般教養の授業で音楽を取らなくてはならなかった。その大学には著名なバロックの先生がいて、一度に200人ぐらいが入る部屋でロンド形式だ、ソナタ形式だのレコードを聴かされた。そこにコーヒーの一杯でも出れば名曲喫茶でどうにか時間が潰せたかも知れないが、本を読んでいる連中は後ろから忍び寄るこの教授によって次から次に本を没収されてしまうという刑罰に処せられていた。今だったら文句のひとつでもいう学生がいそうだけれど、当時はみんな笑ってごまかす程度だった。ありゃぁ、ばれたか、という雰囲気で。しかし、このバロックの権威によってクラッシック音楽に覚醒するきっかけができたかといえば全く反対で、下校時に女学生を何人か連れて楽しげにお帰りになる様子を見れば見るほど、嫌悪感に駆られたものだった。
 そんな私のクラッシック音楽観がこの1-2年で大きく変わりつつある。それはなにかというとひとつは欧州に対する興味から来ている。私は数年前まで欧州に足を踏み入れたことが殆どなかった。あるといえば1980年2月に通りかかって先輩のお宅に2泊させて戴いたロンドンとその時の最終目的地だったコペンハーゲンの2泊。その翌年6月にリビアからの帰り道にひとりで1泊したロンドン、たったそれだけだった。
 それが2007年に英国に生まれて初めてパケッジ・ツアーで英国をバスで旅してみて、視界が開けたというのだろうか。数年間知り合いがウィーンで仕事をしていたということもあって、オーストリアチェコハンガリーにも足を踏み入れてみたいなぁと思って様々なチャンスにハプスブルグ関連なんかを読んだりしていると、どうしてもそこには音楽家の話が出てきて、検索するようになったりしてきたのだ。
 じゃ、その音源を聴いてみようじゃないかと思って図書館のCD棚を見に行くと、お、これは結構な音源が揃っていたりするのである。しかも、ポップスや落語なんかだと引く手あまたでなかなか順番が回ってこないのに引き替えて、こっちはなかなか借り手がいないらしくて、概ねいつ行っても棚にぞろぞろと並んでいようというのである。しかも、交響曲なんかの場合だと、長いものだからCDが何枚もにわたって入っていて、箱の中から4枚も出てくるものすらあるのだ。なんだか得した気分になる。昨日捜したマーラーなんかに至ってはバーンスタイン交響曲が4枚組4セット、つまり全部で16枚セットだったりする。お得だなぁ、と単純だ。
 今年はフランツ・リストの生誕200周年だそうで、ハンガリーではなにかあるらしい。じゃ、その協奏曲でも、と2枚組の狂詩曲選集なるものを借りてきたら、第2番は聞き慣れたメロディーで、お〜これがこういう名前のメロディーだったのかと音信不通になっていた友だちとようやく再会したかの如くである。
 しばらく図書館のクラッシック棚を片っ端から試そうかと思っている。なにしろタダだし、今やどんどん取り込めるしね。