ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

演芸場

 久しぶりに永田町の国立演芸場に行ってきた。先月は休みで、恒例の鹿芝居がなかった。しかし、演芸場に入ってみるとどこかを工事でもしたのかという雰囲気は何もない。こっちから高座を見ても別にわからない。なんだろうかと思ったら、最後の最後にこの上席のトリ、林家正雀が話していてわかった。高座の檜が張り替えられていて、とても良い匂いがするんだそうだ。それで仲入りの時にひとりのおじさんが緞帳下まで来て高座を触っていたんだなと知れた。
 この上席は正雀が日替わりで噺をかけるということでハナから演目が公開されている。今晩は「中村仲蔵だというのでピンポイントで狙ってきた。相変わらず金曜日の夜入りが悪い。しかし、いつもと違って若い人たちがかなり多いので華やかだ。しかし、若い人たち正雀さんの「仲蔵」はわからないだろう。案の定帰りにロビーで演目を書いた張り紙を見て「あ、この人面白かったねぇ」といっている若い女性グループがいたのだ。
 ちょっと用足しを終えてから演芸場に入ったものだから、入るやいなや前座が話を始めた。その「こほめ」を聴きながら、580円で誂えた幕の内弁当をロビーでやっつける。なんでか知らないけれど、腹が減ったのだ。前座の噺が終わると同時に食べ終わったのだけれど、これはなかなか上等なお弁当でした。今度からこれにしよう。
 二つ目は花緑の弟子で柳家初花(やなぎや しょっぱな)ってんだそうだ。凄い名前だな。私は箱根湯本の蕎麦屋の名前かと思った成り。
 柳家小せんは昨年真打ちになって五代目を襲名。鈴々舎馬桜の弟子から馬風の弟子。いや、真面目そうに見えるんだけれど、これで馬風の弟子で良いのかという気になりそう。「紋三郎稲荷」。
 白酒の代演が三遊亭丈二である。「ここより儲かるところがあるってんで、そっちにいっちゃいますから私が穴を埋めているわけです。」彼にあたったのはこれで三回目。今日は新作で、これまで新作と古典ひとつずつだったから、これで新作2-1古典となる。別にサッカーの試合じゃないけど。彼の今日の枕もまた、先の名前が「小田原丈」だった、からだった。
 小ゑんがまた力作を力演。「幸せの石」。なにしろ武蔵工大中退ってんだから妙なところが詳しくて、蔭山係長が取り出す道具は普通の奴じゃ思いつかない。天文オタクの面目躍如で、次から次に繰り出す攻撃の矢にこっちは晒される。この「蔭山係長」の顔つきは凄いぞぉ〜!仲入り前の熱演は面白かった。
 蔵之助代演、三遊亭吉窓は「本膳」。名前からわかるように圓窓の弟子、といってももう52-3歳だ。そのあとは小菊姉さんで、まずは都々逸「犬の遠吠え、新内流し〜」なんてところから。吉川潮のかみさん。
 そして正雀の「中村仲蔵」だ。師匠の先代正蔵・彦六もなんともぶきっちょな真面目さがあった人だけれど、この人だって、その真面目振りに関しちゃ良い勝負なのかも知れない。昨年は1月に京都・南座前進座の「双蝶々」の脚本、幕開き口演を見に行った。この人の仲蔵は後半は誰も彼もが感激に打ち震えちゃうのがどうも正雀さんの人柄なんだろうか。