4月14日から岩波ホールで「オレンジと太陽」という映画が公開されるのだそうだ。原題はそのままで「Oranges & Sunshine」で、これは豪州に行くとまぶしいほどのお陽様に恵まれていて、朝ご飯なんか庭になっているオレンジをもいでくれば良いんだよ」といわれた言葉から来ているようだ。
豪州という国は今は圧倒的に鉱物資源の産出国であり、西側のすべての戦争に参加、派兵している国で、日本の捕鯨にみんなで協力に反対している国という印象があるけれど、実はラッキーカントリーで、ズルズルしている観光地としてしか日本の殆どの人たちは受け止めていないように見えないことはない。
この国はかつての傷をいくつも心に抱えていて、眼に見えない引け目を持っている。しかもそれでいてそんなことは今の話じゃないんだから良いじゃないか、と居直っている世論もある。そういう点では先の大戦の前の日本が中国、アジア諸国でやってきたことを心の傷として抱えていながら、そんなのをいつまでもいっているのは自虐的だと居直るのとかなり良く似ている。
というのは、豪州は先住民を徹底的に差別し、蔑み、彼らの言語を取り上げ、教育をするといって強制的に一族から引き離したり、白人のこどもたちを無理矢理騙して英国から連れてきたりした。彼らは英国から、自分達の楽しみのためだけにウサギを連れてきたり、中部の砂漠地帯のために駱駝を連れてきて野生化してしまったり、大いにこの大陸の自然を破壊してきてしまった。その影響は今から考えると途方もない。
この映画は13万人といわれる多くの少年少女を、新天地で育てるという大義をかざして、豪州に連れてきた事実を取り上げている。第二次世界大戦後、親から離れて養護施設に暮らしていた子どもや、無理矢理連れてこられた子どものことで、彼らは豪州では「The Lost Children」と呼ばれている。
2009年に米国CBSが「60minutes」でこの問題を取り上げたことがある。(こちら)当時、まだTBSテレビが水曜日の夜中にこのドキュメント枠をピーター・バラカンをキャスターに取り上げていて、この放送を見た記憶がある。
この映画にはSocial Workerが書いた原作があって、これに基づいているのだそうだ。この映画は4月14日から神田神保町の岩波ホールで公開予定。
この映画の監督は英国人の映画監督、ケン・ローチの息子のジム・ローチの初監督作品であると書かれているけれど、今日まで私はケン・ローチのなんたるかを知らなかった。硬骨漢というのはこんな人のことをいうのかも知れない。
Oranges & Sunshine: Empty Cradles
- 作者: Margaret Humphreys
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