ほぼ足りてまだ欲 その先

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職務質問

 昨日の東京新聞、夕刊社会面のトップにあったのはこんな記事。

東日本大震災の被災地で、がれきの撤去作業をしていた仙台市太白区の男性(47)が、警察官から職務質問(職質)を受け、缶切りやドライバーなどが付いた「十徳ナイフ」を持っていたことから、銃刀法違反容疑で約三時間にわたり任意で取り調べを受けた。男性は「被災地の実情を無視した捜査権の乱用」として十九日、弁護士と連名で警察当局に公開質問書を提出し、説明を求めた。 (大野孝志)(東京新聞2012年1月19日 夕刊)

 ここに出てくる警察官は東京の警視庁から派遣されていたもので、この男性は地元の人で、グループにも属さず、「地元の者が何もしないのは申し訳ない」と休日を使って、地主の了承を得て瓦礫の整理をしていたのだそうだ。しかし、警官は昨年10月9日午後4時ごろ、同市若林区の畑で作業していた男性に「そのがれきをどこへ持っていくんだ」と職質をした。警察官は車内のバッグを勝手に開けて十徳ナイフを見つけ「これは駄目」と指摘。十徳ナイフには、刃渡り8.7cmのナイフが付いていた、と書いてある。
 ここでいっている「十徳ナイフ」は一緒に掲載されている写真を見るとスイス・アーミー・ナイフだ。銃刀法では刃渡り8cmを超える折り畳み式の刃物は理由なく(ここが問題だが)持っていたら犯罪だとしている。私はボーイスカウトのリーダーをやっていた頃はまさにこれを持っていた。
 東京では警官による職質が横行している。その傍若無人振りは眼に余る。問題にするべきだと思っていた。概ね対象になっているのは男性、一人、バッグを背負っている、30代まで、急いではいない、というパターンに属する人たちだけれど、必ずしも声を掛けるわけではない。見ていると二人一緒に行動している若い制服警官が目配せをしてターゲットを決めているように見える。すると、「ちょっと鞄の中見せて貰っても良いかなぁ」と声を掛ける。人前で私物をあけて見せろと要求されると、周りの人間はどう思うだろうか。あぁ、あいつはおかしいのかな?と思うのが普通だろう。ここで拒否をすると交番か警察に「任意同行」ということにして、連れて行かれちゃう。非常に高圧的だし、有無をいわせない力を制服警官は持っている。盛り場の比較的大きな交番の前にしばらく立っていたら結構頻繁に遭遇する。
 この記事の「被害」男性はなんと警察で3時間も調べられたというのである。記事も書いているように本人が地主に了承を得ていると発言しているのだから、地主にひと言確認すれば終わる話を、である。どう考えても報復措置として留め置いたとしか思えない。警察は平気でこの種の報復措置をする。デモをターゲットにしたら、有無をいわせず梗塞する。人は誰でも何もしていなくても何人もの警察官に周りを取り囲まれたら、恐怖を感じては離れようとする。するともう既にそこで「公務執行妨害」だといえば良い。簡単に検挙できるようにできている。これは原発が事件、事故を起こして周辺に放射能汚染を拡げても、賠償については有限責任になっている法律ができているのとかなり似ていて、権力にとっては万全だ。


 この男性が仙台南署に抗議すると、警察は2ヶ月後に、「犯罪は成立するが、前科がなく、正業に就き、携帯していた状況が平穏」だからと書類送検しないいうことにしてアーミー・ナイフを返却したというのだけれど、これがもし私だったとしたら、正業に就いていないから書類送検されたのかも知れないということになる。
 日頃のあの傍若無人職務質問が犯罪の予防になっているんだというのであったら、この延長線上には特高があり、どこかの国のような秘密警察国家が存在する。ここまでいうと、必ず「何もそんな極端なことをいわなくても」という声が出る。そして「いつの間にか、こんなことになっていた」という事態をもたらす。
 人間の学習能力ははなはだ低い。直ぐに忘れ去る。