アントワープ中央駅からInter Cityの電車に1時間20分ほど乗ってブルージュの街に出かける。この街には前回二泊しているのだけれど、他を見に出かけちゃったりした上に一日が月曜日でミュージアム系が全部休みだった関係でほとんど見られなかったので、そのリベンジということだ。ここではミュージアム連合のような具合になっていて3 day cardなるものを15ユーロで購入に及ぶと何箇所ものミュージアムに入場することができる。一カ所入るのには8ユーロの入場料がかかるのだから、これを買うととても有利になる。欧州の各街ではこのようなタイプのカードが必ず発行されていてそれを知らずに歩くのはまことにもったいない。前回開いていなかったわけではなかったのに、あるひとにきいたら「今日はやってないはずだ」というのでいかなかった「鐘楼」に登る。これもまた例のカードに含まれている。いやいや366段あるという階段はなかなか侮り難く、私のような日頃の運動という点では全くなにもしない男に耐えられる訳がない。上がり始めるや否や、息が上がり、ハァハァ、ヒィヒィ言いながら上がると後ろからくるギリシア系かイタリア系の母と娘が大笑いをする。途中で彼らが前になったり、私たちが前になったりする。上まで上がると彼らが待っていて、ほぼ同年齢と思しき母親がハイファイブを求めてくる。それはいいんだけれど、しばし、足の筋肉はブルブル震え、始末が悪い。景色を愛でる余裕もない。
この街は歴史的な史跡が多いから学校から遠足にやってくるのが多く、小学生から高校生までたくさんの団体が歩いている。その上に各国からやってくる団体観光客が錯綜して上を下への大騒ぎとなる。ところがメムリンク美術館やフランク・ブランギンの力強いタッチの絵画を堪能できるアーレンツハイスあたりにはほとんど人がこない。ほとんど人がこないといったら救世主大聖堂も他の教会に比べると静かだといって良いだろう。
多分もうこの地域に足を踏み入れるチャンスは巡ってはこないだろうけれど、歴史が街中にそのままに生きているということはそこに暮らす人間にとってはとても歴史が身近だということに他ならないのだろう。遠足でやってくる子供達だって、その時点ではおふざけだったり、よく聞いていないのだろうけれど、とにかく生活とともにあるということは非常に重要にちがいない。それを感じられることができたのは感謝すべきだろう。