ほぼ足りてまだ欲 その先

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特徴的

 若い頃はどうして自分は特徴的な人間として生まれてこなかったのかと随分つまらないと思っていたものだった。例えば小学校のクラスにいた佐藤君の様に妙にハーモニカが上手いとか、幼なじみの重ちゃんの様に小学生のくせにカーブが投げられるとか、中学の時の田原君の様に平泳ぎの区の新記録を持っていたとか、木村君の様に毎月の試験の結果発表だと学年の5%の中に入っていたり、高校だと茂呂君の様に学校の高鉄棒でものの見事に大車輪を廻ってみせられたり、大学ではそれまでに200曲もの作品を生み出している先輩がいたり、ジャズでテレビに出ていたり、日劇の舞台に出ている人なんてのまでいたのだから、特徴的な才能を持っている人が羨ましくてしかたがなかった。
 で、今の今まで、そんなことはどこにもなくて、まったく普通のその辺の小さな親父だから、血も沸かず、肉も踊らない。しかし、多分多くの人たちが私と同じように、なんの特徴もなく、ごく普通のその辺の市民なのであって、それがみんな非常に特徴的であったらこの世の中は面倒くさくてしょうがないに違いない。
 ある意味では良かったのかもしれない。実現できたのは少しでも人より早く老け込むことだったのだけれど、それも数年前までは特徴的たりえたのだけれど、そろそろみんなが追いついて来ちゃって、普通になってしまったのだ。