ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

 昨日の集まりにいってこの本を知った。著者は名古屋商科大学マーケティング学部の教授でキャンベラのANUのPhDであり、オーストラリア学会の理事である。
 この中で内海愛子恵泉女学園大学名誉教授、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長が日本軍によるアジア太平洋戦争中の宣撫放送について書いている。この中でCharles Cousensにも触れている。
 彼はここでもたびたび触れているけれど、元は豪州Sydneyの2GBという放送局のアナウンサーだった。他の豪州兵や英国連邦軍の兵士と同様に日本軍に捕虜となり、日本軍が対敵キャンペーン放送を開始するに当たってお茶の水文化学院を接収して作られた施設に送り込まれ、アイヴァ戸栗その他のメンバーとともに、その放送に従事した。その結果彼は終戦後一旦は解放されたが、GHQが発表した戦犯の中にリストアップされて呼び戻される。東京裁判で裁かれることはなかったが、彼は豪州に帰国してから国家反逆罪に問われ裁判となる。結果としては無罪となって放免され、後にはSan Franciscoで行われた「東京ローズ」ことアイヴァ戸栗の裁判にも商人として出廷している。
 昨年の豪州人元日本軍捕虜の皆さんとの交流会で、質疑の時間に、私はこの元捕虜として日本軍の強制労働に従事し、手痛い目にあって九死に一生を得てここまで生き延びることが出来た人たちが、Charles Cousensをどう思っているのか聞いてみたかった。
 私は「彼も私たちと同じように苦労した捕虜だった」というような想い出が語られるものだと思い込んでいた。ところが彼らの反応は非常にはっきりとしたもので、それは明確な否定であった。しかし、時間がなくて、その背景は何なのか、やはり連合軍兵士の意気を阻喪させる宣撫活動に従事した裏切り者というだけのことなのだろうか、といぶかしかった。
 内海愛子もこの著書の中では彼らが否定したことは書いているけれど、それがどの様な心のあり方から出たものかについては触れていない。
 それにしても、この種の集まりは圧倒的に女性の力に負っている。男性の研究者はこうしたことには関心がないのだろうか。こうしたことに関心を持つのは「男として」の「沽券」にでも拘わるのか、はたまた(そんなことはないという反応があるのが当然とは思うけれど)儲からないからなのか。