ほぼ足りてまだ欲 その先

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日常茶飯事

 例のいい加減除染は日常化していた、という朝日新聞の記事は相当に衝撃的だけれど、冷静に考えたら、そんなことをして一体意味があるのか、そんなことが現実に実現可能かどうか考えたら、呆然と佇んでしまう作業者の気持ちはわからんではない。
 わからんではないけれど、だからそれで良いってことにはならない。本当にこれが復興になるのか、ちゃんとした議論がされないとただただ金を突っ込むだけになる。それでなくても自公政権は「経済復興だ」としてばらまきに専念するという意味のない行動に踏み切っているのに。

「手抜き除染、自覚さえ希薄」 作業員から告白メール
50歳男性から届いたメール(画像の一部を加工しています)
 【鬼原民幸、多田敏男】送信日時は1月4日午後8時57分。朝日新聞福島第一原発周辺で「手抜き除染」が横行していると報じた日の夜だ。
 《確かに「手抜き」は横行していました。しかしほとんどの作業員は「それが当たり前」であり、自分たちが「手抜きをしている」という自覚さえ希薄でした》
 取材班に電子メールを送ってきたのは、福島県田村市の除染現場で昨年11月5日から12月28日まで働いたという50歳の男性だった。文章は整然としている。
 《「はやく作業を終えろ」と追い立てられ、それに抗すれば、仕事を干されないまでも仲間うちから孤立してしまう。氷点下の山間の現場で、そのような状況に置かれる事は心細いものがあったでしょう》
 昨年12月、作業班のリーダーから、かき集めたクマザサの束を道路から20m内の作業範囲にはったテープの外に捨てるよう指示されたという。約15人で1人数束ずつを捨てた。車が通らない目立たない所だった。
 《私は新規入場した当初「これが本当に国家的事業なのか(中略)」と目を疑ったほどでした》
 作業現場に広がる倫理観の希薄さの根底には「こんな事しても無駄」という作業員たちの認識があると訴えていた。丁寧に作業していると「葉っぱなんか、どうせ大概流れちまうんだから」と言われ、「周囲と目に見えない溝を感じた」ともつづっていた。率直な心情の吐露だった。
 取材班へのメールは約50本。読者相談窓口への電話やメールは約60本。「私も手抜きをしてしまった」との告白が少なくない。
 取材班は最初に50歳の男性に連絡した。5日、東京都内で出会った男性は筋肉質で細身だった。彼はとつとつと話し始めた。
■作業せかされ、見た目さえ良くなれば次へ
 50歳の男性は福島県で生まれた。早稲田大学を卒業した後、建設や造園の仕事を転々とした。除染の仕事は昨年10月にハローワークでみつけ、下請け業者から「道の端にすでに集められているものを袋にいれるだけの作業」と説明された。
 ところが、実際は急斜面によじ登って草木を集める大変な作業だった。
 「作業がちゃんと終わってなくても『間に合わないから』とせかされ、見た目さえ良くなれば次に移るのが当たり前でした」
 男性は雇用契約書を見せてくれた。日給は1万1千円。賃金とは別に税金から支払われる危険手当(1日1万円)の記載はない。
 環境省の職員が現場に姿を見せることはなかったという。「作業をやっても線量が戻ることもあり、無駄だという意識もありました。監視を強化しても手抜きはなくならないでしょう」と淡々と答えた。
 取材班に届いたメールや電話は100本を超える。別の50代男性は「落ち葉を川に落としてからすくい上げることがあったが、流れていったほうが多かった」と打ち明けた。落ち葉を詰めた袋を川の中に放置したこともあったという。放射性物質を扱う意識が低い作業員も数多くいて、「周りにならされていく自分が怖い」と吐露した。
 地元業者を使わないことが問題だというメールも届いた。県内の建設会社役員は枝葉が川に流されているのを何度も見た。「住民なら下流へ行くことがわかる。地元の人を活用しないゼネコンにも問題がある」
 作業員の立場に理解を求める訴えもあった。60代男性は「全員が手抜きをしているわけではない。マニュアルもないまま手探りで頑張っている」。詳しい研修はなく、賃金も業者に中抜きされる。「待遇が悪い中でまじめに働く作業員まで手抜きをしていると見られるのはとてもつらい」と語った。(多田敏男
 除染の実態や労働状況について情報を求めます。特別報道部の電子メール(tokuhoubu@asahi.com)にお寄せ下さい。(朝日新聞2013年1月9日03時00分)

 50代で早稲田大を卒業していながら今まで非正規労働者として暮らしてきている人にもショックを受けた。