ほぼ足りてまだ欲 その先

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アカデミー受賞映画

 2011年、第84回アカデミー賞・短編ドキュメンタリー賞を受賞したのはSharmeen Obaid ChinoyとDaniel Jungeが監督をした「Saving Face」という45分のドキュメント映画で、これはパキスタン映画初のアカデミー受賞映画である。
 映画はロンドンを拠点にしている形成外科医が硫酸を顔にかけられた女性の顔を丁寧に手術をしていく話だけれど、とてつもなく恐ろしい状況を浮き彫りにする。
 どうやらパキスタンだけではないらしいが、随分前から夫が妻に対する信じがたいほどの暴力行為が蔓延しているらしくて、殴るどころか硫酸を浴びせたり、ガソリンをかけて火をつけたりするという信じがたい行為が年に200件ほども数えられたという。映画の中では顔の半分を失ってしまっている女性も登場する。被害者の女性たちを当事者グループを作らせ、夫を訴え、尚かつロビー活動をして、禁止法を成立させるまでを描いている。DVが程度の差でしかなくて、硫酸を使ったから悪くて、ただ暴力をふるうくらいだからまだ軽いというわけではない。
 映画の中で警察に拘留されている夫の父親が登場するが、まったくの男尊女卑論者で、「あんな嫁は罰を与えれば良いんだ!」と言い放つ。インタビュアーが「どんな罰ですか?」と聞くと憎々しげに「鼻をそいでやる!」という。怖気が走る。
 しかし、そうした物理的な行為に及ばないまでも、それに近い考えに立つ男社会は地球上のどこにでも転がっているような気がする。