ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

奈良タクシー運転手の方へ

 私、実は奈良へはこれまでの人生でたった3度だけ行ったことがある。最初は中学三年生の時の修学旅行。二度目は高校二年生の時の修学旅行。どちらの時のことだったかは覚えていないけれど、薬師寺で当時それはそれは有名人だった高田好胤さんのお話をお伺いした記憶がある。当時、あの方はまだ40代そこそこだったはずだけれど、随分印象に残ることをラジオでお話になっていたという印象がある。74歳位で西方へ行かれたわけだけれど、今から考えてみたらまだお若かったのだと今気がつく。
 三度目というのは世の中がバブルに踊っていた頃の話で、関西に一大テーマパークを作りたいといっていた企業があったのでその調査の一環として行ったことがあるくらいだろうか。USJ日立造船の跡地にできたのは2001年のことだ。あの時バブルが崩壊してあのプロジェクトが挫折して良かったのかも知れない。
 で、あれ以降全く観光で奈良に行ったことがない。奈良の土地勘は全くない。知っているのは法隆寺春日大社薬師寺だけだ。行きたいと思ったことすらない。
 先月、ノルウェーから70歳のお母さんが40代のふたりの娘を連れて日本にやってきた。彼らは既に他界したお父さんと4人で1970年代前半に清水市三保(現在の静岡市清水区三保)に暮らしたことがあって、昔暮らした土地へのノスタルジー旅行にやってきた。おかげで私たちもそこで再会することができた。
 彼らはそのあと知人がいる京都に出かけた。ところが帰国直前に東京へ戻って来るや、電話をよこして、カメラがなくなったという。清水で合流した当時の上司が奔走して下さって、なんとそのカメラは彼女たちが置き忘れたタクシーの運転手さんが奈良駅を管轄する奈良警察に届けて下さっていたのが判明した。その届けを受けた警察官がきちんと報告をあげてくれていたので、電話での問い合わせに直ぐ見つかった。
 とはいえ、お役所の仕事だから直ぐさま「あぁ、そうですか、はいどうぞ」とは行かない。離日寸前の彼らを捕まえ、遺失物届けと委任状にサインを取り、それを元上司の方に託して奈良警察署とやりとりをして戴いた。約一週間前にEMSでノルウェーへ送って下さったものが届いたと、今朝ノルウェーからメールが届いた。
 運転手の方は当然のこととして届けて下さったのだろうけれど、これがこの国の素晴らしいところなんだと思う。私たちはあれから何かといったら「他の国だったらとてもとても出てこなかっただろうなぁ」と語り合ってきた。
 これもひとえにタクシーの運転手さんが届けて下さったからこそのことで、感謝してもしたりない。少なくともノルウェーに三人、いや、その家族を入れたらほぼ10人くらいの人たちが「日本という国は素晴らしい」という印象を持ったことだろう。この運転手さんこそ国民栄誉賞に値する。国として感謝するべきはこういう人たちだと確信する。
追記
 この話をFacebookに書いたら30人以上の人たちから「いいね!」を押して貰った。多分私のFacebookの歴代トップ。