ほぼ足りてまだ欲 その先

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失踪

 読売新聞茨城版にこんな記事が載ったそうだ。

外国人技能実習生の失踪が相次いでいる問題で、県内で昨年1年間に少なくとも293人が行方不明になり、今年は5月末までに115人(前年同期比8人増)が失踪している(読売新聞茨城版2014年06月27日)

国際研修協力機構(JITCO)水戸駐在事務所の担当者は、失踪者数が全国的に増加傾向にあると指摘。1年以上滞在している実習生(2号生)が、2012年度には全国で1532人も失踪(同上)

 JITCOというのは法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の五省共管により1991年に設立された財団法人で、要するに外国人労働者を「研修・実習」という名目でヴィザを発給し、正規労働者ではないということで格安労賃で各地の受け入れ組合に斡旋する機関。研修・実習生の労働環境を指導する立場にもいるけれど、ほとんどの場合は名目だけであり、何しろ五省の共同管轄になっているものだから、どこも責任を取らないという実情にあることは設立当初から現場では指摘されてきた。
 2012年の1,532人という数字はこのJITCOの発表数値である。
 読売新聞茨城版は2013年9月26日にもこれに関わる記事を掲載している。

昨年度は、県内で計252人の2号生が失踪。「失踪率」は4.5%(全国平均1.7%)で全国最悪

 だという。
 これから東京オリンピック景気、復興工事景気で現場労働力が払底してくるとますます、失踪者が増えていくのだろうことは容易に想像がつく。つまりそれだけ「研修・実習」では手元に残る賃金が少ないということだ。使う側からは「研修・実習」なんだから安くて当たり前だということになるのだけれど、実態がその「研修・実態」ではないということの証明だ。
 多分2013年、そして今年の失踪者数を丹念に拾ったら驚く数字になるだろう。外国人労働者といえばかつて南米の日系人労働者を受け入れたが、不景気となって彼らに帰国費用を国家負担にして帰ってもらったという経緯がある。彼らはその後は日本への特殊ヴィザの発給は制限されていたが、最近法務省はこれを解除したそうだ。
 日系人労働ヴィザ、華やかりし頃、現地では悲喜こもごもな話題が報じられた。自分は日系人だからと斡旋業者に日本の法務省への申請を頼んだら、不認可になったといわれ、おかしいなと思っていたら、その斡旋業者がその権利をほかの人間に売り飛ばしていたという事件が相次いだ。つまり利権になってしまうのだ。
 こうした事件を防ぐためには外国人労働者を単なる「労働力」としてとらえようとするこうした制度ではなくて、「人間」つまり永住権を得ることのできる立場として制度化するのでなければ、こうした事件は後を絶たない。
 それでは企業が、産業が儲からない、というのであれば、それは人間を人間としてみていないということに他ならない。