ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

温泉+蕎麦

   これまで行ったことがないところへ遊びに行くというのがテーマだから、レンタカーを駆って上田の先、室賀温泉ささらの湯に行く。実はここは昨年、何かで読んで良さそうだとやってきたら月に2回の休館日にぶつかって無念の気持ちを持って帰ってきたところだ。別所温泉へ向かう道を途中から折れて、4kmばかり走るのだけれど、途中はもうほとんど農村の中の道で、よもやこんな施設があるとはとても思えない。
 昨年は駐車場の入り口で引き返したので、まったく要領を得ていないがとりあえず木陰になりそうなところに車を停めた。今日もまた如何にも暑くなりそうな空模様で、もうすでにかっと照りつける。しかし、10時開館だというのに車の数は少ない。売店はまだ開いていないし、隣の蕎麦処では今まさにトントン蕎麦を売っているところだ。それにしても入り口と書かれたところに誰も出入りしないのはどういうことだ。ガラス扉でなく、木の自動扉という入り口もかなり珍しい。入ると受付の二人の女性がとても愛想が良くて、切符の自動販売機のところまで出てきて教えてくれた。こんなに懇切丁寧にしてくれるところというのは他では1-2度くらいだ。「初めてですか?」と声をかけてくれて、そうだといったらパンフレットを取り出して、レイアウトを教えてくれた。二階にあがって横の連絡通路を歩いて行くと風呂に行けるという。随分歩くんだなぁと思ったら、風呂だけに来る人たちは車でそのままあがって上の入り口から入るんだそうで、地元の人たちはそうしてあがって行くから下の入り口に人の出入りがない、という種明かしだった。しかし、その通路もかなり良い建物で、歩いていて楽しい。
 風呂はかすかに硫黄の匂いがするが大して気にならない。岩風呂と檜の風呂があって月ごとに男湯と女湯が入れ替わるのだそうだ。今月の男湯は檜の湯。といっても岩風呂なんだといわれても、あぁそうかと思う程度。内風呂も大きくて、サウナがあり、露天風呂は温度の高い比較的小さな湯船は屋根がなくてかんかん照りだから、屋根のある大きな湯音の低い方へ人が集中していた。ほとんどの人が地元の爺さん連中で4-5人が高校野球談義をしていた。「いやもう甲子園に出る様な連中は、ほれ、打球が速い、速い!とてもおいつかないだよ!」「ほぉ、ほぉかね!」
 爺さんたちはみんなが風呂セットを持ってきている。こっちは小さなタオル一本だから如何にもよそ者風情だ。地元の人たちは皆さんどうやら定期を持っているらしくて、入り口で「やぁ、コンニチワ」といいながら何やらカードを見せている。そういえば今でもそんな定期入れの様な物が売れらているんだろう。昔は文房具屋で売っていた物だけれど、今ならさしずめ100均か。入ってきた爺さんと出て行こうとする爺さんが世間話をして行く。
 お風呂の代金は500円。休みは第2・4木曜日。
 お昼ご飯はしなの鉄道の大屋と国分寺の間にある「くろつぼ」へ蕎麦を食べに行く。早くいかないと並ぶことになるから早く行こうというのに、つれあいが売店でのんびりリンゴ何ぞを試食している。もうリンゴが出ているのか。
 くろつぼは若い人たちがやっているとおぼしき、旨い蕎麦を出す店で、数年前から年に一度食べにくる。初めて来た時は月曜日の休みだった。Facebookで様子をいつも見ているので、なんだかずっと来ている様な気がする。上に上がると庭の中には車が2台停まっているだけ。ここは上の駐車スペースが空いているのかどうかがわからないものだから、ついつい、下に車をおいてしまう。外に先客は2人づれが一組だけ。ミストが飛ばしてあって、気持ちよい。ほどなく案内されて中に入ると、ほとんどのお客さんが二人連れ。座敷に案内されそうになったのだけれど、つれあいも私も座敷が苦手で、カウンターに取り付かせてもらう。
 田舎蕎麦はまだありそうだったけれど、盛りと夏野菜天ぷら。生まれて初めてここでミニトマトの天ぷらを食べて感激したのだ。ズッキーニ、カプシカム、茄子なんてのが旨い。わが家は二人とももはやこのくらいの蕎麦でも腹がくちくなるのだが、横で大盛りを喰っている人を思わず見てしまう。出て行こうとすると東京ナンバーの車が「蕎麦」と書かれた本を見ながらやってきた。
 上田の市内に池波正太郎真田太平記館という博物館があって池波正太郎が書いた真田太平記に特化した施設である。どうやら再来年くらいの大河ドラマが真田なんだそうで、これからまた脚光を浴びそうだが、そこで挿絵画家の風間完展が開かれているというのでナヴィゲーターに引かれて上田へ戻る。横に大きな駐車場があったので、そこへ車を放り込んで行ってみるとその駐車場はビジネスホテルの駐車場で、なんのつながりもないという。あとで気がついたのだけれど、駅の方へ戻ったところに太平記館契約の駐車場がある。
 入場料は300円だけれど、お城の博物館との共通券だと500円。池波正太郎は浅草・聖天の生まれで下谷区(後の台東区)の役所勤めだったという訳で、台東区生涯学習センターにある中央図書館にそういうコーナーができている。
 私は時代小説だけでなく、ほぼ小説を読まないからまったく知らないのだけれど、池波正太郎真田太平記にはかなりの力を注いでいたらしい。そして愛読者もたくさんいるから、後から後から観光客が入ってくる。ここは規模の割にはかなり金がかかっていて、立派な建物だし、かなり凝っている。しかし、どうも金の掛け方に不思議なものがありそうだ。中にはカフェがあり、池波通の方や、真田ファンの方が楽しそうに語らっておられる。池波の著書の文庫本がたくさん並べてあって売っているが、どうやらここはブックショップという雰囲気ではない。日本のこうした施設はそれほどそうしたショップに関心がないかの様に見える。欧米だとどんな美術館、博物館でもこれでもかこれでもかとショップがあるので楽しい。
 風間完という名前は挿絵画家として随分昔から聴いていたつもりがあるのだけれど、風間は池波正太郎の著書にもかなりの数の挿絵を描いているんだそうで、その縁での風間展だそうだ。どうもこれが二回目の様で、前回は風間が描いた街の風景だったらしく、その図録があった。今回は女性の絵があったりぱりのまちがあったり。ペンで書かれたものに淡い水彩というのが私にはとても嬉しい。ひょんなことで顔見知りにならせていただいた浅見ハナさんのタッチもとてもシンプルな線画があってこれが気に入りでもある。
 フリーwifiが飛んでいるしなの鉄道の中軽井沢の駅舎へ向かおうと、なにもわざわざナヴィゲーターに入れなくても良いのに、戯れにインプットして、ただただそれに従って走って行ったら、とんでもない山の中の行き止まりに連れて行かれ、これじゃいけないとまた走る。これは一体何のなせる技か?
 中軽井沢の駅舎は分不相応なリニューアルを遂げた。まるで不似合いだ。周りのしなの鉄道の駅舎を見ろ。まったく昔のまんまだ。それなのに、なぜこの地元はこんな駅舎を建てたのか。
 答えはこの地区の出世頭である星のリゾートにあると見た。トンボの湯を皮切りに星野温泉を全面的に撤去し、中で使っていた什器備品を当時、遊びにきたノスタルジーに浸る客に「どうぞ、好きなだけ持って行ってください!」といって決別を下し、世の中の金持ち相手の商売に限定した星のリゾートがそこまで手が出せない客にその雰囲気を味合わせて見限った訳じゃない妄想を抱かせるハルニレ・テラスを作り、中軽井沢(かつては沓掛)を西武の手から奪取したが、その延長線上にこの駅舎をプロデュースしたのではないのだろうか。下には街の図書館が移転してきて、すっかり様変わりした。上には展示スペースや、昼は軽いランチ、夜はバルになるスペースを旧軽の某ホテルが運営しているそうだけれど、この駅からトンボの湯へ行くシャトルバスが出ている。駅横にできている駐車場は最初の一時間は無料。それでも軽井沢までしなの鉄道で行き、新幹線で首都圏へ通う客は無料で車を止められる追分においているのではないだろうか。
 それにしてもやっぱり地方は車がなくてはにっちもさっちもいかない。本当に車をいよいよ運転できなくなった時にいった移動するのかという問題はとても大きいし、その移動手段たる車の維持は並大抵ではない。友人がホンダの軽のバンを買った。ところがそれが驚くほどに広いボディーで、その居住性の優れ方が想像を超えているばかりか、彼がギアをバックに入れるやナヴィゲーター画面に後ろの画面が映し出され、私は思わず「あっ!」と叫んだくらいだ。
 夜は友達の夫婦と一緒に御代田にある「浅間翁」へ蕎麦を食いに行く。何しろ毎食だって蕎麦を喰いたいくらいだから異論はない。天せいろをいただく。天ぷらがうまい。
 疲れたのか、夜8時過ぎに耐えられなくて寝てしまう。