ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

本屋

 久しぶりに街へ外出した。やることは本屋に行くこととできるだけ歩くこと。それだけで、後はどうして良いのかわからない。映画に行こうと思ったのだけれど、行ったことがない映画館に行くのは結構面倒くさい。
 地下鉄の駅に向かって歩いて行くと、最後の信号のところに後から歩いてきたストロー系のハットを被ってデイパックを背負った60がらみのおっさんが、まだ赤信号なのに、したり顔でずんずん進んでいき、挙げ句に地下鉄のエレベーターで後から来る人を尻目に扉を閉めて沈んでいった。嫌なことをするなぁ、と思っていたら、こいつがまたおんなじ入り口から乗ったかと思うと、おんなじところで降りた。今日はこの手のおんなじような年格好の爺にやたら遭遇する。
 京橋のLIXILブックギャラリーにまず入って欲しい本が次々に見つかるけれど、本日の行き先がまだ決めていないので、ここで本を持ったりしたら後が大変だと我慢をして、先を急ぐ。
 それにしてもこんな具合に本を集めている書店というのはそうそう滅多にあるものじゃないだろうけれど、私自身はそんなに先進的な本屋さんに足を運ぶことがないのでわからないだけなのかもしれない。
 ホテル西洋の解体が始まるらしくて、とうとう周りに囲いが始まっている。世の中こんなに簡単なんだなぁとなんだか唖然としてしまうのだけれど、世の中こんなことで本当に良いんだろうかと。松島眼鏡が入っていたビルもいよいよ解体されるらしい。
 宝くじ記念日記念宝くじ、3億円が3本当たるって奴が売り出されているらしいんだけれど、一枚500円だと書いてある。こうなると宝くじさえお金持ちじゃないと買えない、ということになってきつつあるみたいだ。
 教文館に入ってみると、週刊金曜日のバックナンバーの最後が8/8号でその後今日発売のものまで何もない。がっかりだ。これまで全く手にしたことがない集英社の「kotoba」が開高健特集で彼が死んでから25年になるんだそうで、なんというタイミングなんだろう。
 例の芸術新潮を我慢できずに入手。ボッシュは女性には多分人気はないんじゃないの?

芸術新潮 2014年 09月号 [雑誌]

芸術新潮 2014年 09月号 [雑誌]

 Hieronymus BOSCH(なんと!本名じゃないらしい!)の特集号である。図書館で見て、思わずブルブルッときた。芸術新潮なんてこれまで手にしたこともないし、ましてや買ったこともない。プラド美術館所蔵の快楽の園が見開きになって入っている。やっぱりこれは借りたんじゃダメで、入手して正解。しかも、小特集として「ネーデルラント美術紀行」なんてのがあって、オランダ、ベルギーの美術館が案内されている。デン・ハーグのマウリッツハウスが改修が終わったという話は聞いていたけれど、福岡伸一先生がそのプロモーション・フィルムに登場したんだという。何でもあの方はニューヨークでお暮らしらしい。それで、Henry Frick Collectionにマウリッツハウスのフェルメールが来た時にNew York Timesなんかに登場したのか。氷解したぞ。2016年がHieronymus BOSCHの没後500年にあたるのだそうだ。

 こちらは開高健没後まだまだたったの25年である。表紙になっている開高健は痩身眼光鋭く、相手にしたら面倒くさそうな壮年の男である。私が彼に気がついたのは彼がベトナム戦争の取材に行った頃のことで、そこからいくつか彼が書いたものを読み、後年、「オーパ」でもう一度フォローしていたくらいだろうか。この前偶々信濃追分の古本屋「追分コロニー」で彼が週刊プレイボーイ今東光の後を受けて担当していた「風に訊け」単行本二冊を見つけたものだから、これまで全く手にしなかった集英社の季刊雑誌を持って帰る気になった。様々な人が彼について書いている。

 改めて書くまでもなく、保阪正康は実に多作である。もうこっちが追いかけるのが間に合わない。息が切れる、元手も切れる。しかも、彼の単行本はどんどん文庫になりKindle化されるものだから、どれが自分が入手していたものか、そうでないのか、俄には判然としない。この本なんぞは今年のお盆前に刊行されているが、彼は二週間に一度のレクチャーの時に一言もこれに触れない。しかし、この本の前書きを読むとついこの前彼がいっていたことである。彼の話を聞いていると、驚くほどにどんどん腑に落ちてくる。それをこうして本にして確認ができるという意味では、実に助かる。

 著者は1966年生まれ。NHKの職員で、NHKスペシャル等を担当しているそうで、アメリカの公文書館で見つけた「ラジオ・トウキョウ」の音盤から始まるが「ゼロアワー」についても言及しているので思わず手にしてしまった。公文書館には「ゼロアワー」の録音テープは40巻あるのだそうだ。全部を聞いてみたいものだ。そしてこの番組に触れている以上、もちろんチャールズ・カズンズにも触れている。当時20歳で外国語学校の学生で、アルバイトで働いていた水庭進というアナウンサーが出てきてカズンズについて触れている。著者はこの本を著すために相当な資料を読み込んでいるようで、巻末に膨大な注釈をつけている。これは話題になっていないかもしれないけれど、非常に手間のかかったもので、詳細にわたって熟読する価値が充分にありそうだ。出版されたばかりにいうべきことではないかもしれないけれど、文庫にして残して欲しい。筑摩ならきっとするだろう。それにしても、元気だったら、こういうものを書きたかったなぁ。

週刊 金曜日 2014年 9/5号 [雑誌]

週刊 金曜日 2014年 9/5号 [雑誌]

 「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育」とは何をとち狂っているんだ安倍晋三