ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

Jazz Country

 銀座6丁目。みゆき通りを泰明小学校の前の路地を入ったところにあるジャズ・レコードがJBLの大きなスピーカーで鳴っている店。多分1970年代中頃の開店で、40年近くになる。ここの店で古い名盤は嫌というほど聴かせてもらった。昼は珈琲で大きな音で鳴っているけれど、夜になるとウィスキーのバーになって音が小さくなる。
 初めて入ったのは多分1978年頃のことで、職場の先輩につれていかれたと覚えている。その先輩は仕事での取引先の人に連れてきてもらったのだそうだ。カウンターの背中にレコードの棚があってぎっしり詰まっていて、見繕ってみると3千枚くらいはあった。しかもターンテーブルが2台あって、とっかえひっかえ回っていた。
 この店では大変な数の人たちに遭遇していたのだけれど、不思議なことに同業者というのは見た目で匂うものなんだというのが経験則である。自分が働いていた業界のトップ企業で働く若者と出会った時も、なんか匂った。銀座の某化粧品メーカーの連中、某映画会社の連中、某テレビ業界の連中、某出版業界の連中、某銀行の連中、某プロスポーツ業界の連中、等が入れ替わり立ち替わりで、出入りして、なんせ利害関係がないものだから、腹芸とか駆け引きってものがないものだから実に遊んでいて楽しい。あの頃の連中の中から何人もの経営者が生まれているし、日本中で知らない人はいないという状況になった連中だっている。彼らとあんな遊びもしたなぁ、こんな店に流れていったっけ、こんなことで議論になったなぁ、という記憶がごろごろと出てくる。
 むしろ、自分の会社の連中とつきあうよりは彼らとつきあう方が下らぬしがらみがなくて良かった。格好をつけていえば、多彩な価値観に遭遇することが出来た人生だったということがいえるような気がする。
 この店が来月いっぱいで幕を下ろすという連絡が来た。銀座はなにもかも変わっていく。もう自分の時代は終わったなという気がする。これまでの存在に感謝である。