ほぼ足りてまだ欲 その先

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阪急三番街

 ほとんど大阪という街に行ったことはない。しかし、随分頻繁に訪れた年がある。1990年の初めのことで、大阪梅田にある阪急三番街という地下街が20周年ということでリフォーム改修工事をした。カリフォルニアのWest HollywoodにあったWet Design(現在はただ単にWETといっているらしい)の「リープ・フロッグ(蛙跳び)」という噴水を一番下の一番奥に設置することになった。
 それで工事をしてくれる会社と、デザイナーの間を調整していた。儲からなかった。地元の水道工事会社はすぐ金を払えというし、デザイン会社は自分のペースでやらせないんだったらやらないで帰るというし、間に挟まって、面倒なことばかりだった。
 なかなか設計が進まないものだから、焦って、現地まで設計作業を見張りに行った。奴らは意地になってやらない。売る気がないのかと腹が立った。
 今や中国でもドバイでも金があるところに出ていってたくさんの作品を売って儲けているあの会社だけれど、当時はなかなかそうした水の優雅な作品をアートとして受け取ってくれる人がいなかった。「あなたは絵を買うのに、キャンバス地がいくら、絵の具がいくら、額縁がいくらだから全部でいくらという買い方をしますか?」と説明して歩いても、塩ビのどれほどの径のパイプが何メーターだからいくらという見積もりを作ってこいという。こりゃダメだとわかっていた。日本人にはこういう芸術は理解されないんだよ、と。他の日本企業が後楽園に売り込んだといっていた。それがいまの東京ドームで、売ったのは栗田工業だ。その後、ラス・ヴェガスのベラッジオに売れたと聞いて、そりゃ凄いと驚いた。
 当時大阪へ向かう新幹線の中では胃が重かった。何度通っただろう。あれから一度だけ地下に入ってぴゅんぴゅんと跳ぶ様を見たことがある。