ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ニッカ

 私が長いこと通っていた銀座の外れの、とても銀座とは思えない路地裏のバーは呑み物にうるさい客はただの一人も来なかったものだからかどうか知らないけれど、呑むものはひげのニッカ一本槍だった。誰も文句をいわなかった。私はそれをもっぱら炭酸割り、つまりハイボールにして呑んだ。
 多分当時のニッカは売れてなかった。サントリーや外国のウィスキーがどんどん売れるようになっていったから、ニッカなんてみんなどんどん忘れていった。オーシャン・ウィスキーなんぞとっくになくなった。
 生まれて初めて余市に行ったのは20年ちょっと前のことだ。海辺に延々と繋がっている道を小樽からバスで走った。これから雪に埋もれる冬を迎えようとする時期だった。駅前に行って、余市のニッカの工場に入ったことを覚えている。余市のことで知っているのはニッカと宇宙飛行士の毛利衛くらいのものだったから。
 まさか、こんなに余市が取り上げられるようなことになるとは思えなかった。鄙びた余市の駅はそれはそれは昔懐かしい国鉄の田舎の駅だった。小樽の街までバスで帰って、ホテルに泊まり、ジンギスカンを食べた。あれから余市には4-5回行った。多分最後に行ったのは15年ほど前のことではなかったか。あれから一度も行っていない。死ぬ前に一度行ってお世話になった先生のお墓参りをしなくてはいけないなぁ。
 実をいうと、ウィスキーを旨いと思ったことがない。酔うから呑むのだ。