ほぼ足りてまだ欲 その先

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金原亭馬生一門会

 もう一昨日になってしまいましたが、上野鈴本演芸場で恒例の馬生一門会が開かれました。必ず年末のこの時期です。
 開場時間に合わせて広小路の駅を降りて鈴本に向かおうとしたらそこに、仲間のふた夫婦が。年に二回、落語の時にお目にかかります。爺さん婆さんが繰り込む中、真打ちになった馬治が配ってくれたのが馬生後援会の方がくださる縁起の飴。それを手伝っているのが二つ目になったばかりの駒松改め馬久。四つの寄席のお披露目の最中に行く事ができなかった詫びをいって、ポチ袋を渡したら、馬久の手ぬぐいを貰った。あいつから手ぬぐいを貰う日が来たんだなぁとだいぶん嬉しかった。
 前座は小駒。彼は笑顔が良い。まだまだ荒削りでまわりを黙らせてしまうんだけれど、ちょっとした仕草や声の中におじいちゃんになる先代の馬生が突如現れて、驚かす。いや、これは面白いことが起きそうな気がする。早くして死んだ三木助の甥に当たる三木男より、面白いことが起きるんじゃないだろうか。
 三木男は「看板のピン」。彼は自分の喋りに酔っちゃっているのかも知れないけれど、あれだけの広さの会場だと枕なんぞ良く聞き取れないんだなぁ。
 馬治が得意の「手紙無筆」オチが彼風の現代版になっていたものだから、よく知らない客が「あれって古典じゃないの?」といっていた。
 一番弟子の馬玉は「悋気の独楽」本当にあいつは巧いし色があるし、艶があるから身体は小さいけれど、きっと評価が高くなるはずだ。げんに馬生一門では一番の人気者。かかる声も多い。
 馬生の一席目は「しびん」。この噺は多分初めて聞いた。まっこと珍なるお話でございます。
 仲入りの時に、トイレが長蛇の列だったものだから、ってんで小腹を満たそうかと外へ出て行ってコンビニでおにぎりを買ってきた。
 仲入りのあとが二つ目に昇進したばかりの馬久が「厄払い」。なんと黒紋付きの羽織で出てきた。二つ目になって目標が二つ。一つ目が、高座を降りるときにクセになっていた座布団の返しが思わず出ちゃわないようにってことと、二つ目はさりげなく羽織が脱げるようにでございますといって笑わせる。噺の方はもちろんまだまだなんだけれど、彼の守備範囲がすこぉ〜し見えてきたような気がする。
 色物は小円歌姉さんで、浅草生まれの浅草育ちだという。ほぉ〜!どこなんだろう。彼女は170cmあるというのだけれど、圓歌はなんと148cmしかないという。三味線が巧いが、歌には時々西洋の風が吹く。故人になった名人の出ばやしをいろいろご披露くださる。こういう趣向は嬉しいねぇ。しかも小駒に太鼓を叩かせる。一年でここまで叩けるようになるもんなんだねぇ。高座でこうして三味線を抱えて出てくる女性といったら柳家小菊だけれど、彼女は吉川潮のかみさんでそのいきさつが「落語の芸人帖」に書かれているんだそうだ。吉川は大学の同期生のはずだ。
 馬生の二席目は「妾馬」私は「八五郎出世」として記憶している噺。八五郎が「お、おい!そこにいるのはつるじゃねぇか!兄ちゃん嬉しいぜぇ、きれぇなおべべきてよぉ〜!」あたりから「おふくろに見せてぇなぁ」にかけて、じぃ〜ンと来ちゃうんだよなぁ。
 ロビーでお客さんに挨拶していた馬生さんと目が合うと「あ、馬久の応援団!」といわれちゃいました。
 みんなで「てんぐ」で打ち上げ。この系統には珍しい爺さん婆さんのテーブルになっちゃった。