ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

病気

 私の病気の記録といった方が良いかもしれません。

吉沢久子、27歳の空襲日記 (文春文庫)

吉沢久子、27歳の空襲日記 (文春文庫)

 著者、吉沢久子は文藝評論家古谷綱武の奥さん。TBSテレビでキャスターを務めた古谷綱正は綱武の弟。吉沢久子はもとは綱武の秘書をしていたが、綱武が召集されている間に東京に留まって記録をしておくようにといわれて書いていた日記がこれ。夜に空襲警報が毎日のようになるというのは甚だ辛い日々に違いない。
 みんな忘れている。みんなもうそんなことを想い出さないようにしているかの如くなのは決まって政権与党の政治家なのがまったく納得がいかない。 エリザベートといってもあの「シシイ」ではない。シシイの孫娘で、結婚してすぐにハプスブルグ家崩壊。1963年に死去。「うたかたの恋」の皇太子ルドルフの愛娘だった。話はルドルフとステファニー妃の出会いから始まるんだから、当然上下本になるくらいたっぷりとしている。これは楽しめそうだ。底本は1992年刊。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。著者の塚本哲也はもと毎日新聞。1929年生まれ。87歳。
 当時の私は欧州なんかにまったくなんの興味もなかったからこの本の存在、いやいや、ハプスブルグ家そのものもなんにも知らなかった。
 そんなことをいうと、本を本気になって読むようになったのも、ここ15-6年のことだからなんにも知らなかったということだなぁ。大学に入って以降それまでの間一体私はなにをやっていたんだっけ?
 あ、いや、そんなこっちゃない。そういえばこれもあった。
ハプスブルク帝国、最後の皇太子 激動の20世紀欧州を生き抜いたオットー大公の生涯 (朝日選書)

ハプスブルク帝国、最後の皇太子 激動の20世紀欧州を生き抜いたオットー大公の生涯 (朝日選書)

  このところバンバン飛ばしている感がある著者の堤未果参議院議員川田龍平の妻であるということは周知の事実なんだろうか。川田の前回の選挙の時にある集まりで、出逢ったことがあるので注目はしていたのだけれど、ここのところは「みんなの党」「維新」「民進」と動いていった夫、川田龍平よりも活躍が目立つような気がする。
 そういえばマスコミの皆さんはもう「パナマ文書」のことはお忘れなのだろうか。この本のタイトルの「政府」というのは勿論「安倍晋三自公連立内閣」のことだけれど、なんで「安部」にしなかったんだろう。多分編集者との間で議論があったんじゃないだろうか。もうひとつの疑問はなぜ角川新書なのかという点かなぁ。
 この本を読むと自公連立安倍晋三政権がやっているのはアメリカの政治とまったく同じって事かと思う。金持ちのための政治。

日本史再検証 GHQとは何か (別冊宝島 2489)

日本史再検証 GHQとは何か (別冊宝島 2489)

 大いに極右に近づいているらしい別冊宝島を手にすることになるとは思わなかったのだけれど、何しろこの本の監修者が保阪正康になっていて、表紙に結構な大きいフォントでその名が記されている。最近知ったことだけれど、米国は日本に対して各国に宣戦を布告することを勧めた経緯があって、最後には日本の交戦国は80を超えるというのだ。これは驚きだった。
 ほとんどがインタビューで構成されていて、保阪も巻頭の解説と二項目について応えているけれど、東京裁判については日暮芳延を起用しているところが宝島だろう。彼の講談社現代新書は資料としては興味深く読んだけれど、彼自身の解釈を数回にわたって聞いた時はさすがに北岡伸一を師と仰ぐスタンスに立っているんだなとがっかりした。
 「ナンジ人民飢えて死ね」と書かれて掲げられたプラカードの写真をあげて「不敬プラカード」とクレジットを入れるところなんぞ宝島の面目躍如。そういう雑誌にいつの間にかなっているのだ。

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗

戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗

 「それでも日本人は戦争を選んだ」の東大の加藤陽子先生の近著。となると当然手にしたくなるのだけれど、450頁を超える著書をおこすのは大変だなぁと思ったら、池袋ジュンク堂で開かれた講義の集大成なんだという。これは大変に嬉しい企画だ。保阪正康もACCのレクチャーを全部本にしてくれたらなぁと思うけれど、あれだけ「ここだけの話」があったらそうはいかないだろう。しかも、あのレクチャーの根幹はあの「ここだけの話」にあって、それこそが興味深い部分なのだ。
 これは一冊を抱え込んでじっくりどこかに籠もりたくなる本なり。しかし、多分私は見ないだろうけれど、この本の目次は年寄りにはとても辛い。
 こちら池澤夏樹による書評が掲載されております。

この書評を書きながら反省したのだが、結論に走ってはいけない。自分の意見に合うところだけつまみ食いしてはいけない。史料を読んで、過程を辿って、その中から今後に役立つものを誠実に抽出する。これはそのよい練習になる本である。

 さすが!

太平洋戦争と日系アメリカ人の軌跡

太平洋戦争と日系アメリカ人の軌跡

 著者、吉浜精一郎の名前はどこかで見たような気がしないではないがと思っていたのだけれど、15年前に出版された「オーストラリア多文化主義の軌跡」の著者だった。道理で見たことがあるわけだ。著者は川崎市の教員だったようで、姉妹都市ボルティモアと豪州のウーロンゴンにそれぞれ一年ずつ交換教員として滞在したそうで、その時の経験、体験からそれぞれの著書をおこしたようだ。私よりも一回りくらい上の年齢で、引退後、横浜市立大の聴講生となり、古川隆久先生についたという幸運もあるけれど、80歳直前になってこれだけまとめられたのには敬服する。
 本の構成は何となく、不思議な形になっているような気がするけれど、これは何の意味があるのだろう。著者の気の赴くままという雰囲気がする。
 加藤陽子先生のものもそうだけれど、しっかりした文献が掲載されているのはさすがである。
 演歌歌手のジェロのお婆さんはいわゆる「戦争花嫁」のお一人だということをこの本で知った。
 確か川崎港とWollongongにある港、Port Kemblaが姉妹港だった。Sydney赴任中に川崎港湾局長ご一行が来て、Port Kemblaまでご案内したことがあった。今突然想い出した。

世界から見た20世紀の日本

世界から見た20世紀の日本

 山川出版社の一連の歴史物シリーズなんだろうか。装幀がとても統一されているんだけれど、別段関連はないというつもりなんだろうか。勿論私は著者名の中に保阪正康があったので、手に入れたのだけれど、彩色した昔の写真がかなり豊富に掲載してあって、それを見るだけでも面白い。しかし、それぞれのキャプションというのかクレジットの中には不思議な記載もあるんだなぁ。
 小沢信夫の銀座の話が面白い。