ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

上野千鶴子

 建国記念の日東京新聞上野千鶴子が寄稿しました。記事から見るとこれはインタビューを東京新聞の記者がまとめたもののようで、多分彼女のことですからもっともっと盛大に語ったに相違ありません。何しろおしゃべりですから。

◆平等に貧しくなろう 社会学者・東京大名誉教授 上野千鶴子さん
 日本は今、転機だと思います。最大の要因は人口構造の変化です。安倍(晋三)さんは人口一億人規模の維持、希望出生率1.8の実現を言いますが、社会学的にみるとあらゆるエビデンス(証拠)がそれは不可能と告げています。
 人口を維持する方法は二つあります。一つは自然増で、もう一つは社会増。自然増はもう見込めません。泣いてもわめいても子どもは増えません。人口を維持するには社会増しかない、つまり移民の受け入れです。
 日本はこの先どうするのか。移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、このままゆっくり衰退していくのか。どちらかを選ぶ分岐点に立たされています。
 移民政策について言うと、私は客観的に無理、主観的にはやめた方がいいと思っています。客観的には、日本は労働開国にかじを切ろうとしたさなかに世界的な排外主義の波にぶつかってしまった。大量の移民の受け入れなど不可能です。
 主観的な観測としては、移民は日本にとってツケが大き過ぎる。トランプ米大統領は「アメリカ・ファースト」と言いましたが、日本は「ニッポン・オンリー」の国。単一民族神話が信じられてきた。日本人は多文化共生に耐えられないでしょう。
 だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。一億人維持とか、国内総生産GDP)600兆円とかの妄想は捨てて、現実に向き合う。ただ、上り坂より下り坂は難しい。どう犠牲者を出さずに軟着陸するか。日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です。ところが、日本には本当の社会民主政党がない。
 日本の希望はNPOなどの「協」セクターにあると思っています。NPOはさまざまな分野で問題解決の事業モデルをつくってきました。私は「制度を動かすのは人」が持論ですが、人材が育ってきています。
 「国のかたち」を問う憲法改正論議についても、私はあまり心配していない。国会前のデモを通じて立憲主義の理解が広がりました。日本の市民社会はそれだけの厚みを持ってきています。
 (聞き手・大森雅弥)
 <うえの・ちづこ> 1948年、富山県生まれ。認定NPO法人「ウィメンズ アクション ネットワーク」理事長。『ケアの社会学』『おひとりさまの老後』など著書多数。近著は『時局発言!』(WAVE出版)。(東京新聞2017年2月11日)

 この記事を元に、みんな貧乏になれ!移民なんか入れてなんかやるものか!という主張だと捉えている人たちが巷にいて、多分彼女のような男女同権運動の旗手を日頃から面白くないと思っている、自分の価値観を保持するためであれば、つまりかなり低次元での自己保身に凝り固まった人たちから見る論評が取りざたされております。
 彼女の論調は、君たち日本人は世の中の荒波に揉まれたことがないんだから、そういう状況に置かれたらなにをするかわからないから、鎖国した方がまだマシだ、そうである以上、衰退していくのはやむを得ないのであって、それなりに覚悟をして、相応なシステム構築を早くやるべきであって、安倍晋三自公維政権のような甘言に踊らされていると早晩エラいことになるぞ!という警鐘なんであります。