ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

外国人研修・実習生

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案を巡り、法務省は16日の衆院法務委員会理事懇談会で、失踪した外国人技能実習生に関する調査結果を発表し、事前に説明した数値に誤りがあったとして訂正した。当初の説明に比べ、失踪の原因として受け入れ先の指導の厳しさや暴力を挙げる回答が増え、劣悪な労働環境が浮き彫りとなった。同日予定された実質審議入りは見送られた。 (新開浩)

 野党側は「制度の根幹に関わる致命的なミス。意図的な不正かもしれない」と反発。立憲民主党葉梨康弘委員長(自民党)の解任決議案を提出したため、委員会は散会となった。

 法務省は当初、失踪後に入管難民法違反で摘発された2,892人のうち、86.9%の2,514人が「より高い賃金を求めて」失踪したと説明。人権侵害など受け入れ側の不適正な取り扱いは少数だったと結論付けていた。

 訂正後の失踪理由では、「より高い賃金を求めて」が67.2%に減り、「指導が厳しい」が5.4%から12.6、「暴力を受けた」が3.0%から4.9%にそれぞれ増えた。法務省は調査結果を訂正した理由について集計データの入力ミスなどと説明した。野党側は、過失では済まない問題だとして今後も追及する構えだ。

 個々の実習生の聞き取り結果を記した「聴取票」に関しては、個人情報を非公開にし、週明けから法務委理事の閲覧を可能にすることで与野党が合意した。野党が委員会審議入りの条件として公開を求めていた。

 改正案の審議入りが来週にずれ込むことで12月10日までの会期内成立は厳しくなり、会期延長の可能性が出てきた。これに関し、安倍晋三首相は訪問先のオーストラリアでの記者会見で「来年4月から制度をスタートさせたい」と今国会成立を目指す考えを強調。「政府として丁寧な説明に努めたい」と述べた。

 聴取票を巡っては、失踪理由の選択肢に「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」などが並び、「より高い賃金を求めて」という選択肢がないことから、野党は当初から法務省の説明を「ねつ造に近い」と批判していた。

◆劣悪な実態、国民に伝えず
 法務省が失踪した外国人技能実習生に関する調査結果を訂正したことで、二つのことが明らかになった。一つは、実習生が置かれている劣悪な環境。もう一つは、政府がその実態を正確に国民に伝えていなかったという事実だ。

 政府はこれまで、大半がより高い賃金を求めて失踪したと説明し、暴力などの不適正な取り扱いは少数と言い募ってきた。実際には122人が暴力を理由に挙げ、半数以上が月給は10万円以下と答えていた。

 実習制度は、日本で得た技能を母国の産業に生かす「国際貢献事業」という建前だった。外国人を「安価な労働力」として酷使している実態が明らかになった以上、制度の廃止を含めて外国人受け入れのあり方を抜本的に議論し直すべきではないか。外国人労働者の受け入れを拡大する法整備は、その先にある話だ。

 安倍政権では、法案の前提となるデータのずさんな扱いが目立つ。働き方関連法を巡っては、裁量労働制の労働時間のデータに重大なミスがあり、裁量制拡大を法律に盛り込めなくなった。財界の意向を受け、実態から目を背けたまま政策を打ち出す姿勢を改めるべきだ。 (木谷孝洋・東京新聞2018年11月17日 朝刊)

 相変わらずの安倍晋三政権のねつ造振りがあぶり出された結果だけれど、この記事でふたつのことを思った。ひとつは今回の安倍晋三内閣の拙速な法案提示によって、むしろこれまで外国人研修・実習生が置かれていた劣悪な状況がここへ来て、あからさまになりつつあるという点を評価したいということだ。今日のニュースでは、このシステムが研修生の派遣元、および受け入れ側に搾取体制が依然として存在することを行政が見て見ぬ振りをしてきたという、不誠実さ、そして当の研修生たちの犠牲の上に私たちの国があぐらをかいていることの情けなさ、をひろく知られるに至ったことだ。

 そしてもう一点は、東京新聞ならではといえるのかも知れないけれど、真実を報道をすると同時に、その原因がどこにあるのかという点を突っ込んで表現しているところだ。これがマスコミであって、ただ発表されたことをそのままなんの批判も追及もなしに、活字にするのであれば、官邸発表となにも変わらない。それをジャーナリズムとは呼ばないし、マス・コミュニケーションの担い手としては全くの失格であるということだ。

 ドナルド・トランプのホワイト・ハウスが彼らを批判するCNNを「フェイク・ニュース」と決めつけて、記者から通行証を取り上げたら、トランプのヨイショ広報たるFOXがこれを批判した。FOXは頑迷極右翼報道機関だけれど、これには、びっくりした。日本で同じ事が起きたとしたら、読売・産経はむしろ記者を批判する。元朝日新聞の上村隆をあそこまで叩いたことを忘れない。