ほぼ足りてまだ欲 その先

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拒否

 元慰安婦に関する合意をめぐる日韓両国の首脳のやりとり。

安倍晋三首相は12日、慰安婦問題に関する平成(2015)年12月の日韓合意をめぐり、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が被害者への謝罪などを要求していることについて「韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは全く受け入れることはできない」と明言した。首相官邸で記者団に語った。韓国が合意をめぐる新方針を発表後、首相が公式に受け入れ拒否を表明したのは初めて。
 首相は「日韓合意は国と国との約束で、これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ」と強調した上で「日本側は約束したことは全て誠意をもって実行している。韓国側に実行するよう強く求め続けていきたい」と述べ、重ねて韓国側に合意履行を促した。
 韓国政府は9日に康(カン)京(ギョン)和(ファ)外相が、再交渉は求めないが合意に基づいて日本が拠出した10億円は韓国政府が負担し、10億円の扱いを日本側と協議すると表明した。(12月)10日には文大統領が「日本が心から謝罪し、被害者(元慰安婦)らが許すことができたら完全な解決だと思う」と述べた。
 韓国政府の対応に日本は不快感を強めており、(本年)2月に韓国で開かれる平昌五輪の開会式への首相出席を見送る方針を固めている。
 菅義偉官房長官は12日の記者会見で、早期に日韓首脳会談を開く必要があるかを問われ「現在のところ予定はない」と述べた。日韓合意については「慰安婦問題の最終的で不可逆的な解決を確認している」と重ねて強調した。
 河野太郎外相はカナダ・バンクーバーで(今月)16日に開かれる北朝鮮関連の国際会議に出席する予定で、同会議に参加する韓国の康外相と会談する可能性がある。ただ、外務省幹部は外相会談が実現した場合の対応について「合意をしっかり履行してくださいということに尽きる」と突き放した。(産経ニュース2018.1.12 20:25)

安倍晋三首相は12日午前、慰安婦問題を巡る日韓合意に関し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が日本側にさらなる謝罪などを求めていることについて「(韓国が)一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることはできない」と拒否する考えを示した。首相官邸で記者団に語った。
 首相は「日韓合意は国と国との約束だ。これを守るのは国際的かつ普遍的な原則だ」と韓国側に反論。「日本側は、約束したことは全て誠意を持って実行している。韓国側にも実行を強く求め続けたい」と述べた。日本政府は合意見直しにつながる協議には応じない方針だ。【遠藤修平】(毎日新聞2018年1月12日 11時19分(最終更新 1月12日 12時08分))

 敢えて産経新聞毎日新聞のそれぞれの記事を引用したのは、本件について、産経系、つまり日本の右翼勢力が本件を如何に怒りを伴う態度に出ているのか、という点が如実だからでもある。
 日韓合意を韓国が一方的に破棄した、これは許せない行為だ、この際韓国とは絶交せよ、という声が乱暴な言葉で語られている。
 実は政府が変わることによって、それ以前の政府が他国と合意したことを破棄して、政策を変えてきたことはこれが初めてのことではない。
 例えば、米国のトランプ政権は、それまで8年間にわたって米国の大統領だったバラク・オバマが他国と行ってきた合意をいくつも破棄してきていることはいくつもある。それらに関して安倍晋三政権が怒りを持って反論してきただろうかといったら、それはない。何度もいわれているように米国がTPPから脱退したことについて、安倍晋三がこれと同じような態度を表明しただろうか。
 これまでの日本政府、ここでは安倍晋三政府だけれど、元慰安婦の問題について謝罪ということを本当にしたことがあるのか、といったら、それは見つけることができない。これは第三者が見ても「謝罪」にあたらない。
 ここでいわゆる河野談話をもう一度見て見よう。

慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話 平成5年8月4日
 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。

 私たちが自覚しなくてはならないのは、私たちひとりひとりが元慰安婦の問題が何を意味してきたのか、それをどのように受け止め、これから先私たちが何を考えるべきなのか、という観点を失ってはいけないということだ。
 その観点は、両国間で合意したからその後は何も知らない、ひとこともこのことについて言及してはならないということではない。「国交断絶だ!」と叫ぶ行為は実は、この問題を何ら問題だとは思っていないという宣言に過ぎないということになるのではなかろうか、ということだ。
 戦争は国民ひとりひとりが始めたことではない。国家が国家機関たる軍隊を使って他国に攻め入るということである。だから、国家が行った、軍隊による行為は国家間で認識し合わなくてはならない。そして、国民ひとりひとりはその国家によってやることになってしまった残虐行為を見つめなくてはならない。そこから目をそらす行為は国家による行為を見逃すことになる。