ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

1971年

 4月一杯を研修ということで、二つの工場で見よう見まねの現場仕事をした。GWに入る直前に配属先が発表され、私は静岡の造船所になった。知った地域だったので、別に困惑はなかった。5日のこどもの日に東京駅から急行に乗って引っ越した。先に送っておいた布団が独身寮の玄関にどんと置いてあった。荷物はそれっきりだ。
 翌朝いわれた時間に出勤する。最初に先輩から「オイ、ちょっときてくりょう」といわれて行くと、裏庭にブルーシートが拡げてあって、そこにこびりついた廃油をはがして綺麗にするのを手伝ってくれ、ということだった。あとでわかったのは休みの間に、駐在しているギリシア人のインスペクター連中を連れて海に行ったんだそうで、その廃油は今から考えてみれば、海辺に打ち上げられた船が捨てた廃油ボールで、なんだか仕事に関連していそうな話だった。
 木造平屋の事務所は随分と古い建物で、三つのグループが入っていた。その一つのグループの長だったのが先日90歳で逝去された方だった。あの人は最初から、あんな年端のいかない私をさん付けで呼んでおられた。今から考えれば恐縮ものである。