ほぼ足りてまだ欲 その先

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派遣

 私が初めて「派遣社員」なる存在を知ったのは、今を去ること40年ほど昔のこと。当時働いていた職場は海外でのある種の建設工事だった。そういう職場では大量に英文文書を作成する必要があって、今のようにそんなものはパソコン上で書いて、推敲して出力して必要部数をコピーするということができないので、手書きで原稿を書いて、それをタイピストに打って貰って、それからコピーしていた。だから、通常の手紙やtelexでのやりとりはともかく、大量の入札書類の作成なんかでは外部から派遣のタイピストを雇ってきて、うちだしてもらっていた。
 そんなある日、隣のセクションの某社員が見慣れない女性に対してきつい言葉を投げているのを目撃する。なんだろうと思ったら、そんな派遣のタイピストの女性に対して「君は途中でお茶を飲んで休んでいたから、判子を押さない!」といっているのだった。つまり彼の論理は時間単位で金を払っているから、その間はトイレにも行っちゃいけないんだというむちゃくちゃなものだった。
 その時に、あぁ、この見慣れない女性は派遣されてきた人なんだと初めて理解した。
 ところがどうだろう、今や多くの労働者が「派遣社員」となっていて、その身分が安定しないパターンに苦しめられている。一体全体、どこから何が起きたんだろうかとつらつら考えるに、この労働者を貶める政策をはじめたのは小泉純一郎で、彼が竹中平蔵とタッグを組んで日本の労働慣行の破壊をはじめたということだ。そしてそれを闇雲に拡大しているのが安倍晋三だ。
 ところが不思議なことに、この国の国民は曲がりなりに、この政策を遂行している政権に引き続き投票している。つまり受け入れているのだ。国民が自らを貶める流れに荷担しているんだから、とても理解ができかねる。