まがい物、と云う言葉はどこから出たのか知らないが、紛い物あるいは擬い物と書くらしい。しかし、これは単なる偽物じゃない。かなり本物に近いが残念ながら本ものじゃないものをいうらしいから、今の時代にいわれるような、どうしようもないがらくたな偽物というのとはちょっとは違っているのかも知れない。かなり程度の良い、しかし、残念ながら安河内の眼はくぐり抜けることができないような偽物、ってことか。
なんでこんな言葉にかまけているのかといったら、本屋でちらっと見たら「ほんもの:白洲正子(じろうのことなど)」なんてタイトルを見たからに他ならない。なんたって私のことだから、それを見てからブツブツと「悪かったなぁ、どうせ金のない俺の生活なんて、まがい物の生活だよ!誰だって金さえあったら本マモンといっても良いような生活を送ってやるんだ」と云いながら帰ってきたんだけれど、こうしてみると、私の生活なんぞ、「まがい物」でもないわけだ。なにしろそんなにグレードは高くない。なにかを真似して作ってみたんだけれど、所詮そういうものだから、適当なところで妥協してね、というものである。それはひとえに自分の頑張り力のせいなんだ。頑張る、今からでもちょっとあれに手を出してマメにやってみる、というような力を出す気がない。う〜む、眠くなったんだからしょうがない、とでも云うように暮らしているんだから。だから、それをそのままにして堂々と暮らせばよろしい。
私は白洲の夫婦を全く信用しない。巧いこと戦中、戦後を渡り歩いた。
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- 作者:デニス・R・マクナマラ
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