ほぼ足りてまだ欲 その先

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確認

 自分がやってきたことがどの辺にあるのか、ということを確認できるというのは大変に心強く感じるものである。そんな機会がこれまでの人生の中で二つばかりある。
ひとつは入り直した母校でお世話になった恩師であり、もうひとつはたった二年だけれどやっていたボイス・トレーニングだった。

 2000年に三年編入した大学の恩師は岡田徹教授。当時、国際福祉論を担当されていた。私の数年先輩だった。とにかくフェアネスを熱く語る先生で、毎年夏休みには学部生を10名ほど、希望者を募って、バングラデシュへ見学に連れて行き、現地で学校づくり等ボランティア活動に参加していた。多くの若い学生たちが影響を受けていた事だろうと思う。私が抱いていた、鶴見俊輔小田実立花隆筑紫哲也といった路線上にあった。哲学的には鈴木大拙を、芸術的にはジャコメッティを私のメモの中に放り込んでくださった。修士を卒業するときに、研究室の書棚からなにを持って行ってもよい、といわれたので全く迷う事なく、丸山眞男の「現代政治の思想と行動」を抜いてしまった。先生と今はもう連絡が取れなくなってしまったのだけれど、お元気でおられるのだろうか。

 2017年に区のイベントで「カンツォーネでボイス・トレーニング」という二週間に一度の集まりに往復ハガキをかいて申し込んだら、当たったので行ってみた。それまでも朝日カルチャーセンターでジャズ・ボーカル入門編とか、ヴォイストレーニング入門編とかに参加したことはあるけれど、前者は毎週なんだけれど、三ヶ月間に5曲ほどの曲を仕上げるが、一回に自分が一人で歌うのが、わずかに5分ほど。そりゃ25人ほどいるんだからそれくらいしきゃ回らない。しかも東大卒のトレーナーが、私の歌が気に入らないらしく、かなりおざなりだった。どうみてもおばさん自己満歌の回だった。これは今でも続いているらしい。後者は、確かにどこかの音大を出ていると思しきおばさんトレイナーだったが、有体にいえば、誰でも良いからウィーンに行って第九を歌う旅行代理店のようなもので、すぐさま辞めた。こっちの区営ヴォイストレーニングは三ヶ月間で終わってしまったが、区の施設を代行運用しているJTBの子会社の職員が、とてもうまい人で、この集まりを続けたい人はいますか?というのですぐさま手を上げたら、15人ほどの賛同者がいて、新たな会が立ち上がった。トレイナーは30代半ばほどのテノールの男性で、バリバリの歌い手ではないのだろうけれど、ひとつひとつの説明が何もかも納得がいくもので、横隔膜の使い方、頭部における音の響かせ方、それを実現するための基礎的身体の使い方の説明が、まさにうんうんとどれもこれも納得がいくものだった。そしてその結果が、私がこれまでの歌で無意識に実行してきたことを裏付けるものだったのだ。さぁ、これからどんどんいくぞ!というところで、COVID-19がどっかぁ〜んと破裂して、その後はあれよあれよと動きが取れなくなり、解散に追い込まれてしまった。かのトレイナーはウクライナで修行をしていたと聞いたけれど、その後どうしておられるのだろうか。