ほぼ足りてまだ欲 その先

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中学美術


 私が通っていた大森の中学にはとてもユニークな美術の先生がいた。別段服装がクリムトみたいな格好をしているとか、長髪だったとかいうのではないんだけれど、とにかく様々な技術をやらせてくれた。とはいってもその時は別段それを意識していたわけではない。今から振り返ると、よくもまァ次から次に教えてくれたもんだなぁとわかるというやつだ。割り箸の先を鉛筆のように尖らせて、それに墨汁をつけて輪郭を書いてあとから水彩で描いていく方法はかなり私は気に入って、写生までその方法で描いていたような気がする。エッチングをやらせてもらったときも、かなり気に入って、銅板に釘だったかで削っていって、ガリ版のインクを塗り、学校のプレスで版画をつくった。この銅板削りも気に入ったんだけれど、家ではプレスがない。色鉛筆でカラフルに塗った上にクレパスを分厚く塗って、今度は尖ったガリ版の鉄筆かなんかで削って下の色を線で暴露する方法も面白かった。楢の木かなんかのブロックを彫刻刀で彫って、自分の手が握りやすい形を作ったことがあって、これは他の人には一体何を表現したのかわからないけれど、実は握ると気持ちが良いという逆転したものをつくったこともある。自分には美術の才能があるとは子どもの頃から思っていなかったけれど、とにかく面白かったことは事実で、だから今でも思い出せるんだろう。残念ながら高校に入ってからは全く美術の授業のことを思い出すことはないが、あの四角い顔をした大柄な先生は特攻隊だったという噂だった。