
うちには孫はいないので、こういう子どもが描いた絵、というのは随分久しぶりに相対した気がする。
緑がいっぱいの山の中で遭遇した白い犬なんだろうか。
なにを描いたの?と聞くのを忘れました。随分迂闊な話。
これを描いてくれた少年は名前をAKITOといいます。「秋に生まれたのでアキトという名前にしました」とお母さんが私におっしゃるんです。場所はイタリア、ミラノから130kmほど北にあるDomodossolaという駅のプラットフォームです。この年、イタリアの鉄道TrenitalianoはDomodossolaからMilano Centrale駅との間で長い事工事をしていて、直接鉄路で旅行することができず、ここからバスで行くか、一旦Novaraへ出て、そこからMilano Centraleを目指すというなんとも面倒なことになっておったわけです。われわれには、代替バスで行くには難しい問題がありました。それはトイレです。一時間に一回は行きたくなるわけで、トイレの付いていないミニバスで突っ走るのは甚だ危険です。それで、遠回り電車で行くことにしました。
それで、日本だったら田舎の駅というようなプラットフォームの端に止まっていた二両編成の電車の扉があくまで待っていると、お母さんとこの少年が佇んでいたというわけです。お母さんの説明にびっくりしてしまいました。こんなところで「秋に生まれたからアキト」と聞かされるとは思いませんでした。何しろ日本に憧れているらしいお母さんでしたから、「日本が好きだから、あきとくんは大谷翔平のDodgersのキャップ?」とお伺いしたら、これまたびっくりです。なんと苗字のイニシャルが「L」なんだというんですよ、だからLAはアキトくんの名前のイニシャルだって。それにしても苗字はなに?と聞くのも忘れていたというお粗末。
結局、この電車は技術的な問題があるから運休にする、次の電車は1時間後に出る、ということになってしまいました。記念にといって、つれあいがバッグにつけていた提灯の根付けをアキトくんにプレゼントしたら、電車が来るまでに彼が描いていたのがこの作品です。
その後の連絡方法を交換することなく、そのまま、元気でねぇ〜!といってNovaraで別れました。アキトくんは大人になってもこの日のことを覚えていてくれるでしょうか。
