ほぼ足りてまだ欲 その先

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キャノン、那須、労働局

 御手洗経団連会長が会長を務めるキャノンの那須工場は、当事者である大野秀之が衆議院参考人発言した2月からもうすでに半年以上が経ち、栃木労働局がようやく是正指導をしたという新聞記事をようやく見付けた。

朝日新聞2007年09月13日06時05分
栃木労働局、キヤノンに是正指導 宇都宮で偽装請負
 キヤノンの宇都宮光学機器事業所で違法な偽装請負があったとして、厚生労働省栃木労働局は12日、労働者派遣法にもとづき是正を指導した。同事業所で働く請負労働者が昨年10月、労働局に違反を申告していたが、キヤノンはこれまで同事業所での偽装請負を否定。請負労働者でつくる労働組合との団体交渉にも応じていなかった。
 キヤノンの製造現場では、実際は派遣労働者として働かせているのに、派遣元の人材会社との間で形式的に請負契約を結ぶ偽装請負が問題化。今年2月には、野党各党が御手洗冨士夫会長の国会への参考人招致を要求。同事業所の請負労働者の大野秀之さん(32)が、衆院予算委員会公聴会で実態を語った。
 キヤノン広報部によると、12日夕、労働局から文書で「労働者派遣に該当し、請負としては不適正」と指摘され、「状況を解消すること」「全社にわたって同様の状況がないか点検すること」を求められた。
 偽装請負で労働局がキヤノングループに文書指導をするのは8度目だが、これまでの指導は2003~2005年に行われている。
 キヤノンは同事業所での偽装請負を否定する一方で、8月末、大野さんら82人を対象に、期間社員としての直接雇用を申し入れた。キヤノンはその際、「社会の関心を考慮して、事態の早期解決を図る」と説明していた。
 労働者側によると、長い人では約10年にわたって請負会社から派遣され、キヤノンの正社員や他の請負会社の社員と混在して働いていた。労働者派遣法では、製造業への派遣期間は最長1-3年に制限されている。

 朝日新聞の記事は非常に冷静というか、淡々としているというのか、気合いが入っていないというのか、弱者を支えるという気概が見られないというのか、「お前エリートぶってんじゃねぇのか」というのか、これが何を意味するのかという点を読者に伝えるという姿勢にない。
 キャノンという企業が「おれはそんなこたぁしちゃあいねぇよ」と云っていたけれど、お上が「あんたのやっていることは間違っているからなおしなさい」と「上意」をお告げになったのだ。しかも、これが初めてのことなんじゃなくて、何度も何度も、仏の顔も三度までとは云うが、8度も「なおしなさい」といわれ続けてきているというのだ。つまり、これもまたキャノンという「越後屋」は無視する可能性が大だと云うことだ。これだけ何回云ってもわからない奴には「こうしなさい」という指導をしなくては改悛の可能性を期待できないのではないだろうか。
 大企業、朝日新聞はこれっぱかりの支援しかする気はないらしいが、地元新聞の下野新聞は、当たり前のことだけれど、正当な反応を見せている。

キャノン是正指導にも労働者側に失望感(下野新聞2007/9/14)
 キヤノン宇都宮光学機器事業所(宇都宮市清原工業団地)で労働者派遣法違反の「偽装請負」があったとして、栃木労働局がキヤノンなどに是正指導したことを受け、偽装請負を告発した宇都宮市の労働者らが十三日、東京都内で会見した。労働者側は「主張が認められた」としながらも、指導が正社員化には踏み込まず、「雇用安定措置を図り不適切な状況を解消すること」にとどまったことに失望感を訴えた。今後は団体交渉でキヤノンに正社員化を求めていく方針で、全国に雇用の課題を投げ掛けたキヤノンの問題は依然として解決していない。
 キヤノン非正規労働者組合の大野秀之宇都宮支部長(32)ら三人が、厚生労働省記者クラブで会見した。大野さんら17人が昨年10月、偽装請負を労働局に告発した。
 大野さんらによると、12日に是正指導を行った栃木労働局は「実態は労働者派遣」と偽装請負を認定。キヤノンの正社員から指揮命令を受けていたことなど大野さんらの主張が認められた。
 しかし求めていた「正社員化」には踏み込まず、「雇用安定措置を図り不適切な状況を解消すること」とした。労働者派遣法の「直接雇用義務」がキヤノンにあるのかどうかも、判断されなかったという。
 大野さんは「11カ月かかって調査した結果がこれだけか」とし、「『雇用の安定』とは何なのか、厚労省に聞いてみたい」と話した。
 キヤノンは是正指導前の8月29日、偽装請負が指摘された職場の請負労働者82人を、期間制限付きで直接雇用することを発表している。
 しかし数カ月単位の契約を繰り返しながら、約10年にわたり同事業所で働いてきた黒田諭さん(29)は「請負や派遣では銀行でローンを組みたくても審査に通らない。期間社員も契約が短く、社会的信用がない状況に変わりない」と訴えた。
 同組合は直接雇用になる10月以降、キヤノンに団交を申し入れる。

 見よ、この踏み込みを。経団連自民党厚生労働省→労働局に彼ら請負労働者が蹂躙されている姿を正しく報じるべきなのがマスコミとしての使命ではないのか。私たちはこうした構図の中で経済発展を誇示することに与するのか、あるいは人を人として遇することを少なくとも大前提として暮らしていくのか、という点を考える必要があるということではないだろうか。大手マスコミはいち政治団体の親方決定の茶番劇を大げさにして取り上げ続け、本当に政治の力を必要とする現実を報道せよ、と云いたい気持ちであるのだなぁ。
 それにしても福田康夫が日頃のあの人を見下した態度、目線をひた隠しにし、猫なで声で、なんの意味もない言語を弄するのを日曜日の朝から聴かされるのうんざりである。