ほぼ足りてまだ欲 その先

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ご苦労さん

 わが連れあいの話で恐縮だけれど、彼女は今月でそれまで15年間続けてきた訪問介護員ホームヘルパー)の仕事をひとまず終えることになった。あとは来週の一日だけだそうだ。私が帰国する前年に娘の学校の関係で帰国していた1998年に区が設けたホームヘルパー2級講座を受けた。当時は2000年の福祉構造改革に備えてヘルパーの絶対数を一気に増やそうとしている時で、措置から契約へという大変革の中にあった。
 それでも在宅介護に従事してくれる人の絶対数を増やさなくてはならないから現場は混乱していた。指導者も払底していた。今と違って殆ど補助によってヘルパー養成が行われていたといって良い。今では民間の企業が養成講座を実施しているけれど、私はこの種の介護労働者の育成は本来的には国の費用、介護保険料の中からでも工面されるべきで、資格取得希望者が負担するべきではないのだと思っている。
 それ以前は街中にポツポツと存在していた家政婦紹介所を通して紹介されていたいわゆる家政婦さんをお金に余裕のある家庭は雇っていたし、お金に余裕がなければ家族でどうにかするしかなかった。だから、制度移行直後は家政婦さんもヘルパーとして訪問介護に従事していた。完全看護ではない病院というものが普通にあった当時は入院患者の付き添いを家政婦さんに依頼するという仕事もあった。
 家政婦さんというものはすべからく家族が行う作業を全面的に補佐するという業務だったし、かつてはその職務範囲なんて決まっちゃいないからなにからなにまでもやるのが当たり前だった。それが訪問介護員になってからというものは法によって家族にはやれることでも訪問介護員が手をつけてはいけない行為があるから、その間の齟齬に誤解が生じることはいくらもあった。介護労働を利用する本人も家族も、訪問介護員を家政婦と同じと考えている人が存在した。いや、今でもいるかも知れない。庭の掃除まで要求するし、家族の食事の賄いを要求するなんてことは日常茶飯事だ。その度に現場で説明をしてもハナから「家政婦」だと理解している人は、「金を払っているんだから」と思っている、一割しか払っていないけれど。そうするとケア・マネージャーの仕事がまたひとつ増える。
 ひとつの制度が大きく変わるとそれが浸透するまでには10年程度の年月は必ずかかる。ここまで来ると問題も垣間見えてくる。ひと頃医療保険が保険料を払っている以上医療行為を受けないとそんになるという風潮が横行したけれど、それに近いことが介護保険にも生じているという印象がある。このうちに果たして訪問介護が必要だろうかと思うことも多々ある。近くにいる人でそれを果たすことのできる人が明らかに存在することだってあり得る。それでも、それを飲み込んでも、これから先益々、訪問介護がより必要になることは明らかである。
 若い人たちが従事してくれる様な職種にしていかなくてはならない。