ほぼ足りてまだ欲 その先

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保阪正康

 真珠湾奇襲攻撃によって太平洋戦争が始まり、アジア太平洋地域で1千万単位の人々の命が失われた。私たちの国はどんな教訓を学んだのか。首相の演説の眼目はそこにあったが、真珠湾という「点」からしか語られず、深みはなかった。
 「和解の力」という言葉は美しいかもしれないが、日本は米国とだけ戦争したわけではない。「点」から「面」へと拡大した戦場では東南アジアや中国の人々らが犠牲になった。首相の演説は戦争の一部だけを切り取り、ポエムのように語っている感じだった。
 学ぶべき教訓とは、政治が軍事をコントロールできなくなると人々をどれだけ不幸にするかだ。それを人類史の教訓として語れば、首相は謝罪という言葉を使わずに死者を悼むことができたはずだ。ただ支持率の高い首相の演説は、日本人の平均的な戦争観の反映とも言えるかもしれない。
朝日新聞2016年12月28日23時55分 聞き手・武田肇