ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

 現役時代、企業広報を担当したことがある。わずか3年半だったが、その期間は大変に充実した日々だったという想い出だが、それは忙しかったからだけではない。今でこそ企業コンプライアンスということをいわれているけれど、当時はまだそうした考えが一般的になっていなかった。それはそれでしょうがないだろう。役員の中にも、新聞記者に会って話をしてもなんの足しにもならないと思っている人もいて、折角インタビューをしてもらえる場をしつらえても、嫌みを飛ばして、見るからに上から目線でものを言い、相手を嫌な気分にしてしまう人だっていたくらいだった。それを説得できなかったのがわたしの度量のなさだったのだけれど、そういう人は少数だった。
 中には新聞記者に逢うと何かお土産をあげなくてはならないと思っている人もいて、ちょっとした隙に、時が来たら公にしようと準備している案件をぽろっといってしまう役員もいたりする。現場からは「お前が悪い」といわれのない罪をなすりつけられたりする。忖度の嵐。
 当時の上司はわたしが現役中に仕えた尊敬すべき上司のお一人で、とにかくフェアな企業広報をしようと尽力された。どんなことでも最初に嘘をついてしまうと、その後始末にはどんどん嘘で固めるしかなくなってしまう。だから、最初に勇気を持って対処しようといっておられた。
 ある日、某産業系に強い新聞社のほぼ同年齢の記者が、他社から引き受けようとしている企業のことを嗅ぎつけてきた。正式になったらもちろん会見をする準備を、その会社と進めていた最中だった。「そんな話はない」とはいえない。もうそこまで来ているのであれば、急遽発表してしまおうかとしたが、上司は役員会のプロセスを飛ばすことはできない、として書かれても良いから事実を書いてもらえ、といった。わたしはその記者に電話で「知っていることをいってくれたら、間違っているところは指摘する」といった。大きな記事にはならなかったけれど、一面に載った。小細工をするなというのはその後身に沁みた。
 多分財務省をあげてそう思っているだろう。

2018年03月14日のツイート