ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

Fountains of Bellagio

テレビ東京というのはやっぱり一地方のテレビ局なんだなぁと思うのだけれど、ぼーっと見ていたら土曜日の昼の徳光和夫の番組で、物まねタレントのコロッケがラス・ベガスで公演をしたというのだ。そんなもの受けるわけがないのは火を見るよりも明らかだ。それを「たいしたもんだ」と持ち上げる番組造りっていったい何よ。
 そうそう、ラス・ベガスがテレビで取り上げられるとかつてはヴォルケーノー・ショーが映し出されていたものだけれども、ここ数年はラス・ベガスといえばベラジオの噴水ショーである。音楽に合わせて何本もの噴水が踊る姿はさすがにラス・ベガスだと感嘆の声を上げるものである。
 この噴水はマーク・フラー率いるところの「Wet Design」の作品であることは一目で分かる。元々はディズニーにいた人間でディスニー・ランドやフロリダのディズニー・ワールドの構内にいくつもの興味深い”水の造形”を創り出していたのだけれども、独立してこの会社を興した。日本で云えば東京ドームの入口にある音楽に合わせた噴水が彼らの作品である。今はどうなっているのか知らないが、施工と受注は栗田工業であるが、その下についてデザインをしたのがウェット・デザインである。むしろ栗田工業は彼らの現地施工会社だったといっても良いだろう。彼らの日本における代理店を務めたのは伊藤忠商事から独立した男性が作った会社だった。
 ウェット・デザインのサイトは英語だけではなくて、スペイン語、中国語、そして日本語で書かれている。一体誰が日本語にしたのか知らないが、なかなかユニークな日本語でその面から楽しむことができるのがさすがである(というのはたいそうな皮肉であるけれど)。portfolioを「折カバン」と訳してあるのは一体全体なんなんだ、というくらいのものである。この場合やっぱり「作品一覧」とかすべきじゃないのかなぁ。ひょっとすると既に今はきちんとした日本の代理店はいないのかもしれない。今の日本の企業文化の中ではこれだけの完成度の高いエンターテインメントを導入できる力はもう既にないからだ。その点からいったら、まさにこれからの中国は彼らにぴったりな市場かも知れないけれど、直ぐにその偽物をいくらでも造られてしまうかもしれない。何しろホンダのバイクをひとつひとつの部品までそっくりそのまま作ってしまうので、ホンダの純正部品がそのままフィットするという逸話が表しているように、彼らのコピー商品に対するモラリティは大いに不足していて、再現する技術は大いに盛んだからである。
 彼らのサイトにも書かれているけれど、当時のヒット作といえばフロリダのディズニー・ワールドにあるEPCOT Centerの前に設置された「リープ・フロッグ」と呼ばれる噴水だった。あたかもガラスの棒のように見えるクリスタルな水の棒が、飛んでいく。そのピュアーな感じがとてつもなく面白かった。それが日本にもほんの少しではあるが、いくつか導入されている。しかし、メンテナンスもろくに施されずにそのまま放置されているような作品は彼らにとって実績とは云いたくないことだろう。彼らのサイトにも全く触れられていない。そのうちのひとつが大阪梅田の三番街にあった。今もまだ存在するかどうか知らないが、あの梅田のパサートすらぶち壊してしまうという阪急の価値観から云えば、壊すと云えばそれまでだろう。
 東京の三菱地所もそうだけれども、彼らの価値観というのは、破格の価格でゴッホを集め、挙げ句の果てに「これは自分が買い取ったものだからどうしようと俺の勝手だ、死んだら棺の中に一緒に入れてくれ」と云って大顰蹙を買った大昭和製紙の二代目、斉藤了英のそれと五十歩百歩である。どんな建物だろうと、どんな絵画であろうと、自分のものだからどう壊そうと燃やそうと自分の勝手だと思っている。こんな社会に文化が育つわけがない。その点ではラス・ベガスの街も負けず劣らずであるが、面白いものに対する感性は育つだろう。
ところでその斉藤了英が1990年6月に小林画廊を通して7500万ドルで落札したというその「医師ガシェの肖像」は今一体どこにあるのだろうか(ネット上ではこの時の価格が7500万ドルとするものと8250万ドルとするものが混在しているがどういうわけなんだろうか)。