ほぼ足りてまだ欲 その先

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介護報酬不正請求 ー いつまで続くのか

 各紙が取り上げ、テレビのニュースでも取り上げられていたが、東京都の監査結果としてコムスンニチイ学館ジャパンケアサービスの各社にいくつかの勧告が出ている。この種のネット上の記事では最も詳細に報道しているのはこれまでも読売新聞である。Yomiuri Onlineで今日の記事(2007年4月10日3時1分 読売新聞)を見るとコムスンが指摘されていることはいくつもある。
 3事業所が、実際には勤務していないヘルパーを常勤として届け出るなどして、介護事業所の指定を東京都から不正に受けていた、というもので、「実際には別の事業所で勤務しているヘルパーを常勤職員とするなど、事実と異なる記載をした届け出書類を都に提出して事業所指定を受けた。欠員状態は開業後も続いていたため、3事業所が自治体から受給した介護報酬計約4000万円について、都は不正請求にあたると認定し、返還を求めている。」そして東京都が「3事業所の指定取り消し処分を内定していたが、都が手続きに入るための聴聞を通知する直前に、コムスンは3事業所の廃業を届け出た。都道府県は廃業の届け出の受理を拒否できないため、都は取り消し処分を断念した」という。
 つまり、処分を受けることを避けるために自らこの事業所を閉鎖してしまえば処分とならなくて傷が付かないという手段を執ったというわけである。しかし、この事業所の閉鎖によってそれまで介護契約を結んでいた利用者はどうなったのだろうか。他のコムスン系の事業所がカバーできたのだろうか。一方、この事業所から派遣されていたヘルパーは仕事を失ったのだろうか。コムスン介護保険がはじまり、民間企業の参入がはじまり、それまでの措置から契約に福祉構造改革が大きく舵を切った時に鳴り物入りで参入してきて、全国に拠点を展開し、そんなことをしても儲からないところからの撤退は民間企業である限り企業の自由裁量だろうし、危険極まりないと云う警鐘が鳴らされていた中で、やっぱり始まってすぐにいくつもの拠点を撤収していったという過去を持っている。
 今回の都による指摘には、この他に「管理者が不在の期間があったり、サービス提供責任者や常勤ヘルパーの数が介護保険法の基準に達していなかったりしたことがわかった。介護保険の対象外の散歩への付き添いを「身体介助」としたり、家事援助の掃除の時間を増やしたりするなどして、介護報酬を過大請求していた事業所も見つかった」と報じられているし、「何らかの過大請求があった事業所は、監査対象となった186事業所の相当数に上るとみられており、都は同社に対し、過大請求分を自主的に再計算して、介護報酬の支払いを受けた区市町村に返還するよう求めた」と云う現状を見ると問題の根は深い。これは恒常的にこの企業が法の精神を無視して介護事業を展開しているのだと云うことを物語っている。コムスンは読売新聞の取材に対して「ビジネスモデルの再構築中でもあり、都の指導監査の進ちょく状況については、取材に答える状況にはない」などと文書で回答しただけのようである。どう再構築しようとしているのかをつまびらかにすべきではないのか。答える状況にないとはどういう意味か。これだけ大きく展開している事業である以上、その利用者に対する影響はなまなかなものでないことは明らかであり、説明する責任がある。前にも書いたけれど、コムスンはクリスタル系の介護事業所も先日の買収によって系列化したが、この180数カ所はそれらを含んでいないはずで、そちらがどうなっているかについても気になるところである。実際にコムスン系となってその事業所のキーパーソンだったコーディネーターが離れてしまい、新任のコーディネーターはお世辞にもベテランとはいえず、利用者情報に関する守秘義務という基本すら守られない状況にある事業所すら存在している。
 2000年の福祉構造改革以降の見直し作業が事業所の経営の効率化に傾きすぎている傾向はないだろうか。利用者オリエンティッドという概念を根本においた上で事業所の経営効率化を見るという方向性よりも、介護事業の提供側がまずあってそこから利用者を考えるという方向性に立った施策となってはいないのか。審議会に参画する研究者の立場はその観点で常に警鐘を打ち鳴らすべきではないのか。なぜならその他の委員はすべからく利益追求集団のスタンスに立っているからである。
 この記事ではその他2社の対応として「ニチイ学館広報課は業務改善勧告を受けたことを認め、「指摘を受けたことは誠に申し訳なく、速やかに改めるよう進めている」とコメント。ジャパン・ケア・サービスの担当役員は「勧告を受けたのは事実。人員配置の管理が甘かったので、指摘された部分は即日改善した」と説明した」と報じている。