ほぼ足りてまだ欲 その先

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ドウス昌代

 先日想い出したものだから本棚から抜き取って彼女の「東京ローズ(文春文庫 1982)」(単行本は「東京ローズ—反逆者の汚名に泣いた30年」サイマル出版会 1977/01)を取り出してまた最初から読み直しはじめた。もう紙は茶色くなりかかっていて、26-7年前の時日を感じさせるのだけれど、なにしろドウスはアイバ・戸栗・ダキノ本人に数回インタビューをして、その上カリフォルニアから電話をして事実関係の確認をしたといっているくらいだから、相当な情報を網羅しているわけでこれがドウス昌代の第一作だというのは驚くべき作品となっていることを再認識するとともに、これだけの報告が上梓されてしまうと、これに互して新たな視点から「東京ローズ」を纏めるというのは余程の新事実が出てこないとなかなか難しいことだろうと思えてしまう。
 以前にも触れたことがあるけれど、上坂冬子が書いた「特赦—東京ローズの虚像と実像 (1978年)(後に文庫になって「東京ローズ—戦時謀略放送の花 (中公文庫)」はこれも参考にしているが「NHKの中に場所をしつらえたというのは間違いだ」と恒石重嗣の証言を掲載していたと記憶しているけれど、むしろそれくらいしかケチをつけることができなかったといっても良いかも知れない。
 この本の中身は全部了解していると思っていたけれど、こうして読み直してみるとまたまた新たな視点を見いだすことができるのは興味深い。