ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

身体的相違

 豪州に暮らしていた頃、私が住んでいた家の隣はArthurとEdithという白人の老夫婦だった。前にも書いたけれど、Arthurはパプアニューギニアに従軍していた元ANZACというか英連邦軍の兵士だった。可愛い小さな家に二人暮らしで、それはそれは庭に手をかけて素晴らしいEnglish Gardenを作っていた。何度かお茶に呼んでくれたので遊びに行ったのだけれど、家の中は昼なお薄暗い。とても可愛く飾ってあるのに燦々とお陽様が差し込むという雰囲気からはほど遠い。
 教会で知り合ったのはJohnとJuneというやはり英国系の老夫婦で、Johnは戦争中は連合軍の兵士として通信諜報部隊に所属して、戦後は日本に進駐したという。彼からは様々なことを教えて貰った。彼等は子育てが終わってからそれまで住んでいた大きな家から木造三階建てのアパートの一階に暮らしていたけれど、彼等の家もJuneのキルトのタペストリーを中心に綺麗に飾ってあったけれど、薄暗い。
 遊びに行くと落ち着くのだけれど、なんだか薄暗いのが気になる。よく見ると天井に照明がない。スタンド照明みたいなものばかりだ。そういわれて考えると私が今住んでいる集合住宅は外から見ると各戸の室内照明は隅々まで照らし出しているように明るく見える。この差はなんだろうと思った。
 Juneがいうにはコーケイジャンは目の色素が薄いというのだ。日本人の殆どは目が黒い。コーケイジャンには茶色い人が殆どだ。中には青い人までいる。だから多少暗くても大丈夫なんだという。彼等は暗いと感じていないのだった。その代わり外に出ると私たちと較べて日射しが強くて疲れるのだそうだ。
 その代わり、といってはなんだけれども、彼等は寒さに強い。まだ春浅き日曜日に友人と釣りに行った。朝はまだ寒い。私はちょっと大げさかとも思ったけれど、ダウンジャケットを着ていた。ビュンビュン投げてもその日はあたりが少ない。そろそろ飽きてきそうな時に、すぐ近くでバシャバシャと水の音がする。何事かと辺りを見回すと、なんと高齢の男性が泳ぎはじめたのである。いくら何でもそりゃないだろうと唖然としてみていると「なんだ?」という顔をする。
 Johnがいうには彼等の平均体温は私たちのそれに較べたら高いというのだ。だから、私たちほどには辛くないらしい。だからすぐにちょっと温度が上がると半袖シャツになったりするということのようだ。真似をしたら風邪を引いてしまいそうだ。
 横浜開港が昨年で150周年だといっていた。今日は井伊掃部頭直弼が桜田門の外で水戸藩浪士に惨殺されてから150年なんだそうだ。なんだ、まだそれっぱかりしか経っていなかったのか、と驚く。アメリカに揺さぶられて、お公家さんが息を吹き返してからまだたったの150年なんである。