ほぼ足りてまだ欲 その先

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認知症施設

 本日のNHK「報道首都圏」は「漂流 認知症高齢者〜ある精神科病院の4か月〜」ということで常盤台の「飯沼病院」が登場。精神科病院だけれど、かなりの割合で入院患者の中に高齢認知症患者が存在している。
 本来的には大規模施設としては特別養護老人ホームがその機能を果たすべき施設であるけれど、今やこの種の施設は申し込んでも三桁のウェイティング・リストは当たり前。へ手をすれば500人ぐらい平気で待っている。入ることができるのは巧いこと繋がり、まぁ、有り体にいえばコネクションを持っている人だったりする。
 それができないから老人保健施設という本来的には急性期を終えた病院入院患者が自宅療養に移る過渡期を過ごすという目的で作られた施設だったり、身体的には何ら問題がなければ、グループホームという選択肢がある。例外的な存在として見逃されてきたのがこの精神家系病院だったり、はたまた結果としての刑務所だったりするわけだ。
 グループホームといえば先日長崎で火事になって利用者が4人死んだ。すぐさま国土交通大臣が反応した。

 火災のあった施設にスプリンクラーの設置義務がなかったことについて、「現在の基準でいいのか、検討していかなければならない」と指摘したうえで、「関連省庁との間で、法令との関係を整理しながら検討していく」と述べた。(FNNニュース2013/02/12 13:08)

 容易に想像のできる反応である。なんで10人もの年寄りが集中して暮らしている施設にスプリンクラーの設置が必須となっていないのか、怪しからんじゃないか、というわけである。こういう事件があると必ずこういう反応になる。延べ床面積275平方メートル未満の設備には設置義務はない。多分国交大臣は責任逃れのために設置義務を云々するに決まっている。
 そして厚生労働省も「調査」をするんだそうだ。

 全国の認知症グループホームなどでのスプリンクラー設置状況を把握するため、総務省消防庁などと合同で実態調査を開始したと発表した。4月19日までに各自治体に調査結果の報告を求める。(msn産経ニュース2013.2.22 12:44)

 しかし、これは大変に大きな問題になる。スプリンクラー設置を必ず要求するということになると、グループホームの設立に関してまたハードルが高くなることになるわけだ。
 これから先は今まで以上のペースで認知症患者の収容施設の必要性が高まるはずで、それはもう何十年も前から分かりきっている。今のわが国の認知症対策はその場しのぎのどこかでどうにかなって収まってきた。イヤ、正確にいうと収まってはいないけれど、そうであるように振る舞ってきたというべきだろうか。
 それを吸収してきたのがこの種のグループホームであって、精神科病院であり、はたまた刑務所だった。多分社会保障関連への歳出をできるだけ押さえていこうとしている寺・公連立政権が抜本的な前向き対策をこの分野に積極的に適応していこうとするとは思えない。本来的には在宅介護を充実させ(つまり24時間介護を現実的なものとして計画する+認知症となった時の施設入所)、どうしても施設でないと介護しきれないとなった時にはすぐさま収容できるというシステムを構築するようにしないと、誰かしら、コネのある人、ラッキーな人はその介護重要度に関係なく入所してしまって、どうにもならない人をどこかに形式的にあてはめてその場を凌ぐしかなくなってしまう。
 どうしても施設でなくては介護しきれない状態になった時には例えば月5万円程度の個人的小遣いは支給されるものの資産はすべて国家に吸収するシステムくらい作っても良いのではないか。
 そのためには在宅介護のための人的資源をその収入を確保することによって確立する必要がある。
 厚生年金を設定しなくちゃならなくなるからホームヘルパーに週に20時間以上働かせない事業所はいくらもある。これではやる気のある人すらやる気をなくす。こんな施策でこれからの日本を乗り切れるわけがない。
 何が何だといっても、これだけ数十年の時間がありながらほとんどなにも改善できなかった自・公連立政権は怠慢のそしりを逃れられない。しかも、まだ彼らはそれがわかっていない。一体全体今一番必要なことがなんなのかがわかっていない。霞ヶ関は2000年の福祉構造改革が一体何をもたらしたのかよく考えるべきだ。あれから実になんにも変わっちゃいないのだ。
 この場に及んでグループホームスプリンクラーの設置状態を調査するという。
 極論を申し上げると、今スプリンクラーなんてどうでも良い。自宅にいても火事になったら危ない。あちこちで一人暮らしの高齢者が火事でなくなっている。これを無視してもどんどん認知症患者用のグループホームを増やせ。それしか今すぐを乗り切る方法はないぞ。元立教大教授で公益社団法人・長寿社会文化協会理事長の服部万里子先生が「悠長なことをいっている暇はありません。今すぐ入って戴ける施設を」とNHKクローズアップ現代に出てきて強調していたことが忘れられない。