かつて働いていた職場で、私はかなり遅くまで事務所にいるのが日常化していた。あれは丁度20年くらい前のことだ。夜の8時頃になって珍しく隣のグループの電話が鳴った。誰もいないんだから、電話に出る必要もなくて、そのまま放り出しておけばいいのだけれど、あんまりしつこくなるので、出た。
そのグループの中には茨城の原研に出向している人がいたのだけれど、その社員の所在を訪ねる原研からの電話だった。探している理由がわからなかったので、どこまで真剣に追いかければよいのかがわからない。
すると向こうが勝手に喋る。なんでも彼はいわゆる鉱物に放射線を照射することによってどんな変化が起きるのかという研究をしているらしいのだけれど、どうも照射した鉱物を持ち出した可能性があるというのだった。それが何を意味するのかといったら放射能汚染されているものを管理区域外に持ち出しているということだ。思わずぞっとした。
しかし、その後彼がどうなったのかは知らないけれど、表だって何かが話題になることもなかったから、私はもう忘れてしまっていたけれど、例の福島第一原発の事件以降、思い出す回数が増えてきた。
電力会社の原発だけでなく、様々な研究機関で放射線にかかわる設備があり、様々な被爆が発生しているはずである。
