ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

二度目

 新宿の地下道を紀伊国屋本店に向かって歩いていたら、角からぬっと出てきた、歳の頃なら60代後半と思しき労働者風の男(ってどんなんだよ?)が眼があうなり、人なつっこい顔をして、「お〜、久しぶりだなぁ〜!」というのである。全く覚えのない男だ。「え、どちらで?」といったら、「俺だよ、電気屋の鈴木だよ!」といいながら握手をせんとばかりに手を出してくる。ここで直ぐさま「あっ!」と思った。
 場所は違ってあれは銀座の日曜日だったのだけれど、三越の前あたりで全く同じ言葉で声をかけられたことがあるのだ。全く違う男だけれど、あの時も「電気屋の鈴木だよ、ナベさんのところで一緒だった」といった。あの時は現実に渡辺という部長の下で電気技師たちもいて、中には鈴木という人間がいたというセクションに所属していたことがあったから危ないところだったけれど、今度は直ぐさまわかった。だから、「そんな奴しらねぇや」と踵を返してさっさといってしまった。
 銀座の時はその男は私に向かって「実は競馬の裏に精通している奴を知っていてね、今さっき場外馬券売り場で換金してきたんだよ」といいながら手にしたバッグのチャックを開けてご丁寧にあたかも10枚ごとに折ったような札を見せたのだ。あとから聞いたら、そんな言葉で引きずり込んで教えてやるから金を出せという「コーチ屋」という詐欺なんだと聞いた。
 私はそんなにボォ〜ッとして歩いているらしい。次の時はくっついていってみた方が良いだろうか。